鉄道と温泉。
旅の醍醐味でこれほどマッチした組み合わせはない。
車は確かに便利だ。
効率よく1日にいくつもの温泉を巡ろうと考えれば車はベストチョイスと言える。
しかし、効率よく回ることに主眼が移り、せっかくの湯浴みが「運動会」と化す懸念がある。
その点、鉄道の旅は時間の制約を受ける。
ローカル線になればなるほどその度合いは増す。
また、温泉の最寄りとされる駅が必ずしもお目当ての湯に近いとは言えないケースも多い。
しかし、それらマイナス要因を差し引いても、鉄道が車に勝るのは「呑める」ことだ。
もちろん呑めなくても、運転という緊張と狭い空間から解放され、のんびり揺られながらの旅情は、きっと日常に埋没していた「心地よい時間」を思い出すことができるだろう。
子供の頃、移動手段の選択肢は鉄道やバスしかなかったが、大人になった今はあえて「鉄道」での気持ちが強くなった。
特に夜行列車は最高だ。
近年、めっきり減った旅情だが、数少なくなった日本の夜行列車を惜しみつつ楽しもうと思う。
特に「あけぼの」や「日本海」は、観光客よりも所用や商用で利用する乗客が多い貴重な空気が漂っている。
その人々の生活や仕事を想像するのも楽しい。
この「鉄道と温泉」駅では、ぜひ鉄道で行きたい温泉をのんびり気ままに紹介してみたい。
上野駅13番線で出発を待つ寝台特急「あけぼの」