1996年(平成8年)5月18日土曜日。
麻布十番温泉の大広間において、歴代の「TVチャンピオン・温泉通出場者」が集まった。
当時はまだ六本木ヒルズなどもなく、下町情緒のある良い界隈だった。
故・野口悦男さんと飯出敏夫さんの呼びかけで、第1回及び第2回チャンピオンのIさん、第3回及び第4回チャンピオンのGさんはじめ、各回に出場したメンバーが勢ぞろいした。
車掌長は温泉歴こそ長かったが、1湯1泊をモットーとしていたので、入湯数では皆さんの足元にも及ばない28才の若輩者だった。
しかしながら、1000湯や2000湯に入ったという皆さんに会えただけで大満足の一日であった。
各々入湯した後で宴会となった。
初めは温泉談義に花が咲きまくった。
お酒も進み交流も深まった頃、野口さんと飯出さんから或る提案が打ち出された。
真の温泉の素晴らしさをこの世に知らしめる会を発足させたいというものだった。
じかに源泉が注ぐこと、循環湯でないこと、大規模や華美でないこと、湯を大切に守る人がいること…etc
当時、温泉ガイド本の多くは、取材時のモテナシで骨抜きにされ「本音を書く」ことがなかなか表に出なかった。
だが、そうした状況に一石投じようという会の趣旨に満場一致の賛同を得た。
取材者が良い部屋に案内され、ご馳走漬けになった宿を褒めちぎるのではなく、自分のお金で泊まって感じたありのままの良さや、その逆を知らしめたいということが、この会の原点であることを感じ取った。
その場で会の名称が決まり、日本旅行作家集団「温泉達人会」が第一歩を踏み出した。
(ただいま停車中)