新たな時を刻むプレゼント

カテゴリー:③番線:時間旅行、時刻表方面 2018年3月 3日 05:27

先日、希望者挙手さんとお会いした。

場所は、JR中央線神田駅構内にある「神田鐵道倶楽部」。
希望者挙手さんの選定であったが、車掌長も行ってみたいバルで嬉しかった。
(バルとは、食堂とバーが一緒になったような店)

当日、時間厳守を信条とする車掌長にはありえない、待ち合わせ場所への到着時刻にあわや「遅延」の懸念が発生。それは、ここ1,2年の忙しさを象徴するような、仕事絡みが理由であった。

しかしながら、ウルトラC的な移動術と運で、ダイヤは「早期復旧」し、定刻に到着できた。

期待のバルは、昭和・国鉄時代の列車「愛称板」や行先表示「サボ」等の鉄道部品が所狭しにディスプレイされ、車掌長が鉄道(時刻表)三昧の生活を送っていた時代へ、一気にタイムスリップさせてくれた。

店内はカウンター席のみで、13名しか乗客になれない人気店。
だが、そこは希望者挙手さんがしっかり「指定券」を確保してくださり、湾曲したカウンター部分の店内を見渡せる上席、いわゆる「勝席」に案内された。

メニューを開けば、長距離列車にはなくてはならない旅の醍醐味である「食堂車」があった時代、供食サービスを担っていた日本食堂さんのお品書きが並び、注文が目移りした。

列車名等に因んだカクテルもあり、まずは「はやぶさ」で乾杯となった。

実は、今宵のセッティングは、希望者挙手さんが車掌長の50歳を祝う場を設けてくださったもの。
そして、乾杯後に小さな包みを手渡してくださった。

蓋を開けて上部から覗くと、鈍く光る金属が目に入った。
そして、それを柔らかく包んでいた緩衝材の木毛(もくもう)から優しく取り出しかけた途端、それが何であるかを理解できた。

それは、SEIKO製の鉄道懐中時計…
そして、本体を裏返してみると、「昭43 □ ○○○ 国鉄」との刻印…

車掌長の生まれ年である昭和43年から、同じ時を刻んできたものであることを実感し、思わず、その時計を掌(てのひら)で摩り、愛おしさが込み上げた。

また、時計本体には多少の擦り傷や汚れも否めないが、かく人間も50年生きていれば、叩けば出る埃もあるし、負った古傷も幾つかはあるもの…
車掌長にとっては、そんな経年の傷さえもが「美品」に思えた。

希望者挙手さん曰(いわ)く、昭和43年で、なおかつジャンク品ではなく、今もネジを巻けば動くものが、なかなか見つからなかった…と。

余談だが、精工舎(現SEIKO)が国産初の鉄道時計に指定されたのは、1929年とのこと。
以来、90年近く経った今も、鉄道懐中時計は、その視認性に優れたデザインもほぼ変わることなく、日本の鉄道が世界一時間に正確な運行を支える必須アイテムとして信頼の時を刻み、使われ続けている…

早速、竜頭を引っ張りながら時刻を合わせ、ネジを巻くと、秒針が動き始めた。
そして、戴いた翌日朝、目いっぱい巻き、更に翌朝同じ時刻にも目いっぱいネジを巻くと、20回指を動かすことができた。

おそらく、24時間で20回巻けると察しがついた。
毎朝、同じ時刻に巻き、50歳を迎えたこれからの新たな「時」を、この時計と一緒に刻んでゆこう…と、感慨に耽(ふけ)った。

そして、思わず神田鐵道倶楽部のスタッフであるW氏が、お通しをテーブルに置いてくれた時に発する「出発進行!」をシャレた名フレーズが脳裏を過(よぎ)った。

新たなステージを歩む「時」の始まりを祝し、車掌長自身も「出発進行!」と指差し呼称。

末筆ながら、希望者挙手さんには、心からの御礼をこの場をお借りして申し上げます。
誠にありがとうございました。
 

 

コメント(2件)

希望者挙手さんからのコメント(2018年3月 4日 17:16投稿)

こんにちは 久しぶりの乗車となりました。
ご誕生半世紀、おめでとうございます。

当日は神田駅開業99周年(車掌長のほぼ倍ですね…笑)とも重なり、限定メニューなど味わうことができたり、想定外で他のお一人様乗客と旅は道連れ的になってしまうハプニングがあったりもしましたが、楽しい時間を過ごすことができました。

私の50歳イベントのように大々的な企画でお返しできませんでしたが、このプレゼントは前々から考えていたもので、正直、入手には思った以上の手間と時間を要しましたが、車掌長に喜んで頂けて、苦労した甲斐がありました(笑

ただ、動作確認はできておりましたが、誤差がどれ程あるのかわかりませんので、しばらくはご注意願います(汗

実は私がこの2月に9社目となる転職をしたこともあり、お互いに節目の門出となり、まさにW氏の「出発!進行!」の掛け声のもと新たなスタートの時を共に過ごすことができてよかったです。

これから更にパワーアップして人生をエンジョイしていきましょう!

車掌長さんからのコメント(2018年3月 4日 21:50投稿)

希望者挙手 様

毎度ご乗車ありがとうございます

改めまして、先日はありがとうございました。
神田鐵道倶楽部車内での相席も、旅情緒があり良かったですネ。

それにしましても、戴いた懐中時計を手に入れるのに、かなりご苦労されたこと、お察しいたしました。

また、その入手に際し費やしてくださった時間や手間も、希望者挙手さんのお心遣いが身に沁みて参りました。

プレゼントは、何を戴いても嬉しいものですが、心のこもった物ほど、その方のお人柄も滲み出るものです。

懐中時計は、時を刻み始めてまだ数日ですが、毎朝ネジを巻き、正確に動いております。
当車掌区にある中途半端な電波時計よりも、正確に時を刻んでおります。

やはり、時計もそうかもしれませんが、大切に使われたモノであれば、機械式の方が信頼性があることを実感いたしました。

次世代へ継承する媒体は、デジタルが主流であることは間違いありません。

しかしながら、車掌長は考え方が旧い人間で恐縮ですが、次世代以降の単位、つまり数百年後の継承であれば「紙」が優れていると考えます。

保存状態にもよりますが、全国各地の博物館や郷土資料館にある古文書などを見るたび、よくこういう貴重なものが、今まで残されているいるものだなぁ…と感心します。

車掌長も50歳を迎え、いずれ自身にも必ず訪れる人生の「終着駅」というものを、遠からず意識しおり、所有する厖大(ぼうだい)な時刻表もどのようにして、未来の人が過去を知り得る「遺産」としての在り方を、ボンヤリながら考え始めました。

話が脱線してしまい、申し訳ございません。

ところで、希望者挙手さんも先月は別の新たな門出とのこと。
転職回数は競うものでもありませんが、希望者挙手さんの方が多くなってしまいましたネ!

お話を伺った様子では、厚遇であり、希望者挙手さんの持てる力を存分に発揮できそうなので、良いタイミングだったと思います。

蔭ながら、今後益々のご活躍をご祈念しております。
体にだけは、くれぐれもご自愛ください。

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