いい日旅立ち・Twilight Express(余章)

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2014年12月28日 20:14

トワイライトEXPの旅を終え、すっかり日常の生活に戻った或る日、1つの小包が届いた。

伝票を見ると、心当たりのある品名を目にし、再度トワイライトEXPへの興奮が呼び覚まされた。
それは、車内販売で奮発して買った1対のコーヒーカップであった。

食堂車「ダイナープレヤデス」のモーニングで使用されるそのカップ…
休日の好天の昼下がり、コーヒーを注ぎ、口に含むと、何とも言えぬ余韻に浸ることができた。

初回の序章から”いい日旅立ち・Twilight Express”と題し、長々と綴ってきたが、車掌長がこの場で記し続けてきた”いい日旅立ち”とは、「別れ」を意味していた…

それは、単に来春廃止されるトワイライトエクスプレスとの別れだけではない。
上手く表現できないが、何か車掌長の内面的な部分との別れを意識していたように思う…

小学生の頃から一人旅を始め、百回以上は乗った夜行列車や寝台列車。
それらが、ここ十年ほど前から毎年春になると数本ずつ、その使命を絶たれ姿を消されてきた。

そして今年、もう消される列車そのものがなくなり、比較的乗車率が高く廃止は暫く無いだろう…と、高を括っていた「トワイライトエクスプレス」と「北斗星」の廃止が発表された。

一個人がセンチメンタルに存続を訴えても、覆すことのできない無力さに、虚しさが胸中を漂う…

しかしながら、そんな考え方を変える意志を決意したのが、このトワイライトEXPの旅であった。

それは、沢山のことを吸収できた、夜行列車や寝台列車で過ごした「時間」への感謝。
そして、それらの蓄積を経て、研ぎ澄ませることができた「時間」に対する独自の概念…

今後は、時刻表や過去の列車と共に歩み積み上げた「時間」について、見つめてゆこうと考えた。

「時間」とは、誠に不思議そのもの…
誰にも等しく与えられた1日24時間という平等な枠組みの中、その営み次第で様々なドラマが生まれる。

現実的には、運の有無や貧富の差、性別、生育した国や地域の環境、社会状況etc…本人の努力だけでは咲かない花も、実らない果実もあるかもしれない。

だが、仮にそうであったとしても、何か1つでも己の夢や欲するものを追い続けることが、結果はどうあれ唯一無二の自分の人生を楽しむ方策なのではないだろうか…

そんなことに、この歳で気付き、この機を”いい日旅立ち"と位置づけたのが題名の由縁。

ところで、今回の乗務日誌は、実際にトワイライトEXPに乗るまでの章の方が、圧倒的に長い構成となっている。

これは、さほど意識した訳ではなかったが、結果的にこのような構成になってしまった。
そこで、こんなふうに感じることがあった。

それは、物事は本番や当日までの準備期間、そこまでの期待や夢を見ている時間こそが、実は最も楽しいのではないか…ということだ。

旅も人生も、準備や心持ち次第で、如何様にも豊かに楽しく過ごせると、言い換えられるだろう。

"いい日旅立ち"、そんな想いを新たにした今…
トワイライトエクスプレスの汽笛が、遥か遠くで聴こえたように思う。

(追記)
末筆ながら、稚拙な内容に最後までお付き合いくださり、誠にありがとうございました。
今回分をもって、本年の乗務納めといたします。

2014年も「哲×鉄」乗務日誌、ご愛読(ご乗車)いただきお礼申し上げます。

皆様、どうぞ良いお年をお迎えください!
 

 

コメント(2件)

希望者挙手さんからのコメント(2014年12月29日 14:19投稿)

こんにちは
今年も一年、ありがとうございました。

今年最後の大安の日に、トワイライトエクスプレスの素敵な旅物語で締め括られるのは、さすが車掌長ですね。

今年は列車での旅がほとんどなかった私ですが、新年は汽車の旅での幕開けを企画しております。

以前より家内にSLに乗ってみたいと言われており、結婚20年を迎えた今年は、元日から夫婦でSLパレオエクスプレスに乗って、新たな気持ちでいい日旅立ちを迎えられればと考えています。

車掌長の念入りな作戦とは違い、数日前に思い立ったものですから、三峰口から復路のみの乗車となりますが、往路はのんびりと長瀞でこたつ舟など楽しみながら、秩父鉄道の旅を楽しみたいと考えております。
並走する国道140号線は何度もバイクで走ったことがあるのですが、秩父鉄道に乗るのは、実は初めてです。

今年も色々とありましたが(笑)、車掌長からは色々と助言や刺激をいただき、ありがとうございました。

お互い良き年となるよう、今まで以上にぶっかましていきましょう!(笑
新年もどうぞよろしくお願いいたします。


車掌長さんからのコメント(2014年12月29日 19:34投稿)

希望者挙手 様

本年も毎度毎度のご乗車、誠にありがとうございました!

今年最後の大安の日に乗務納めとしたこと、バレバレでしたか?!
行動パターンがお見透かしで、お恥ずかしい限りです(笑)

ところで!ご結婚20周年の幕開けを「鉄」で飾るとは、縁起の良いことですネ!
Anniversary な1年を、どうぞ佳き年にして下さい。

もし、池袋からレッドアローで秩父へ向かい、前述のような行程でしたら、西武鉄道の「秩父フリー切符」がお得ですのでご参考まで。(こたつ舟もささやかな割引があります)

SLは車掌長も大好きな乗り物です!
生き物のような息遣いや迫力は、何か元気をもらう気分です。

末筆ながら、こちらこそ色々なことをこの乗務日誌上で教えていただき、大変勉強になりました。この場をお借りしてお礼いたします。ありがとうございました。

そして、希望者挙手さんの仰る通り、来年も今まで以上に盛り立てましょう!
まずは、船橋ですかね?!

お互いにかなりズッコケも多い人生ですが、人生は泣いても笑っても一度きりですから、大いに楽しみましょう!

では、来年もぜひ沢山のご乗車、お待ちしております!

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いい日旅立ち・Twilight Express(最終章)

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2014年12月28日 04:50

食堂車が連結されているのも、トワイライトEXPの魅力の1つ。

ダイナープレヤデス(食堂車)は3号車にあり、南千歳を出発する頃から営業を始める。
そして、16:00までの時間帯がティータイムとなる。

車掌見習を連れてのフランス料理のディナーは、想像しただけでもゾッとしてしまう…
ゆっくり味わえないどころか、周りのお客さんへの気遣いや、実際に間違いなくご迷惑をかけることを想像すると尻込みしてしまったので、このティータイムは貴重な利用時間だ。

いまや日中に食堂車を利用できるのは、日本で唯一、このトワイライトEXPのみ…
まずは専務車掌とサッポロ・クラシックを注文し、乾杯!

やがて、日本の鉄道で最も長い直線区間(沼ノ端~白老)へと列車は入り始めた。
厳密には途中駅での分岐部分に曲線もあるが、28.7㎞の直線区間は、さすが広大な北海道と実感。

空席を待つ他のお客さんもいなかったので、つい1時間弱も長居してしまったが、数量限定のスィーツもいただき、至福な時間を過ごすことができた。

札幌を出発して2時間が経とうとする頃、やっと今宵の居室へと戻った。
車窓は夜への準備を始めたようで、早くも薄暗くなっていた。

今回はB寝台コンパートメントと呼ばれる、上下2段の寝台が向き合った4名用の区画。
この4名分の切符が取れると、廊下との仕切りにガラス戸やカーテンもあり、個室化できる。

トワイライトEXPであれば、最後尾展望が楽しめる「スィート」や、優雅な個室「ロイヤル」での"一夜の主(あるじ)"になりたいところだが、その切符は99.9%入手不可能…

また、子連れで荷物も多いと、B寝台個室(2名用)での添い寝はかなり窮屈なので、今回の旅の趣旨としては、ベストなチョイスだったと思う。

更に、このような国鉄時代の面影を色濃く残す寝台設備に、専務車掌や車掌見習にも乗せてあげられたことが嬉しくもあり、なんだか誇らしかった。

まもなく、本日最後の停車駅「洞爺」に到着。
ここで後続の特急列車に道を譲るため、暫し停車。のんびり記念撮影をしたりホームを散歩した。

洞爺駅を出ると、注文しておいた夕食の「日本海会席御膳」が部屋に運ばれた。
大きな箱御膳は一善ずつ丁寧に包まれ、温かいお吸い物も付いていた。

ここで、自宅から持参したCAVAを開栓し、祝杯!
乾いた喉に心地よく、スペイン産のスパークリングワインが通過していった。

御膳の料理は、どれもお酒の杯が進む肴ばかりで、酔いの走りも速い。
そんな頃合いに、記念グッズを満載した車内販売のワゴンが部屋の前で止まった。

こんな気が大きくなっている時に、限定グッズ販売が訪れるとは見事な算段だ…と思いながらも、車掌長にとっては高額な品にもついつい手を出してしまった。

車掌見習はパジャマに着替えて、下段の1つを占有して眠っている…
大きくなった頃の記憶に残るはずもないが、せめて、このような寝台列車に乗ったという想い出を残してあげたく、パチリパチリと様々なアングルのベッドで眠る車掌見習を撮り、眼を細めた。

車掌長は独り、廊下に格納された椅子を引き出し、暗闇の車窓を眺めた。
子ども時代から馴染みのこの椅子の座り心地…

とっても懐かしいが、これで座り納めだなぁ…と、座面の生地を撫でながら感謝し、これまでの功績を礼賛(らいさん)した。

翌朝6時、予約しておいたシャワーを浴びに4号車へ。
ちょうど、ツアー参加者の朝食時間も同刻だったようで、同じバッジを付けた人々が狭い車内を3号車へ向かって大移動していた。

一般客の朝食は3部制で初回は6:45~だから、ツアー客は番外であることを知った。
哲×鉄車掌区一行の朝食時間は8:20開始だったが、食堂車に入ると「○○クン、おはよう!」と、車掌見習の名前を言って出迎えてくれた。
これはとても嬉しい一言であった。

金沢駅を出ると、車内で朝刊が購入できる。
早速、部屋でコーヒーを飲みながら紙面に目を通した。列車内でありながら、ホテル滞在のような快適さだ。

敦賀駅では、機関車付替えのため、最後の長時間停車。
ここでは食堂車のスタッフが、記念撮影の手伝いをしてくれ、1号車スィートの車体に施されたトワイライトEXPのエンブレムの前は順番待ちの盛況ぶりであった。

哲×鉄車掌区一行も、トワイライトEXPの車掌と一緒に記念撮影をしていただいた。

敦賀駅を出発する際、部屋へは戻らず4号車のサロンへ向かった。
ここはぜひ見ておきたい「鳩原ループ線」の眺望を、大きな車窓から楽しみたかった。

勾配をかせぐために大きな弧を描いてトンネルを抜けると、ほぼ一周した形になり、その下方にはついさきほど走った線路が見えるポイントであった。

やがて列車は、琵琶湖の西岸を走りはじめ、いよいよ旅の終わりが近づいてきた…

最後の停車駅である新大阪駅を出ると、昨日札幌で聴いた"いい日旅立ち"のメロディが流れた。

12月12日、12時53分、定刻に大阪駅着。

走行距離1,508.5㎞、所要22時間48分。
名実ともに憧れの日本最長距離列車「トワイライトエクスプレス」の旅は終わった…
 
もう逢うことのできない緑色の車体に、感謝と惜別の念を込め、列車を見送った。
 

いい日旅立ち・Twilight Express(第4章)

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2014年12月25日 05:47

札幌駅4番線ホームは、トワイライトEXPの入線を待ち侘びる人々で活気づいていた。

グループ客においては、互いに笑顔で写真を撮り合う様子や談笑の姿が見受けられた。
一方、一人旅らしき面々には、各人の想いや喜びを噛みしめているように映った。

こうした在来線長距離列車に特有の旅情や風情も、まもなく見納め。
旅立ちの高揚感、始まる旅への期待や憧れが交錯するホームの情景が、来春には失われてしまう…

急がぬことを承認し、乗車中という範囲で「急がなくてよいこと」を担保された夢の移動時間。
それは、安心してその身や時間を列車に委ね、咎(とが)めのない自由に過ごせる空間…

トワイライトEXPには、日常は時間に束縛された現代人や、これから自分の時間を悩み考えて未来を担う子供たちにこそ、乗って感じてほしい格別の魅力があると思う。

新幹線であっという間に目的地へ着いてしまう旅では味わうことが難しい、「自己との対峙」や「人との出逢い」を楽しめる、旅本来の醍醐味が残されている。

それはもしかしたら、車窓に流れる風景の速度や単調なレールの響きが、生理的に気持ちの余裕を生み出すのかもしれない。

そんな感慨に耽(ふけ)っていたら、重連のディーゼル機関車に牽引され、深緑に黄色の帯をまとった寝台特急が、気高くも気品に満ちた編成で入線してきた。

Twilight Express…
なんと美しい列車名だろう…

「北斗星」や「カシオペア」も素敵だが、両者以外にも、かつての寝台列車には「天体」に因(ちな)んだ愛称が多かったことを懐かしく思う。
「金星」「彗星」「明星」「月光」「北星」「銀河」「新星」「天の川」…

「トワイライトエクスプレス」は、横文字の造語でありながら、なぜか「乗車することが目的」となり得る誘惑に満ちた妖艶さがある…

それは「綺麗」や「可憐」とも違う、なにか夜の帳(とばり)が下りる前の、シルキーな時間との出逢いを約束してくれそうな…そんな憧れを抱かせてくれる。

やがて、列車は僅かにブレーキ音を響かせ停車、今宵の住まいとなる8号車乗降口の扉が開いた。

寝台券に印字された1番上・下段、2番上・下段を確認し、乗り込む。
取り急ぎ荷物だけを置き、4号車の「サロン・デュ・ノール」へ向かった。

この車両は、屋根上まで達する大きな曲面窓が5枚連続しており、独特なその外観は大変優雅。
そして、その1枚ずつのガラス窓に2人掛けの席が配され、出発の喜びをここで噛みしめたかった。

14時05分。
トワイライトEXPは、定刻に札幌駅を発車。

まもなく、序章の冒頭に記した"いい日旅立ち"のメロディが流れ、アナウンスが始まった。

思えば1ヵ月前…寝台券が取れた時の驚きと感動を味わった。
また、それと同時に、もう1枚の目には見えない切符を手に入れたのだと思う…

それは、「トワイライトエクスプレス乗車」という、有効期間1ヵ月の「未来への切符」であり、その日から乗車を待ちわびる夢のような時間が始まった。

楽しみに向かう「未来の時間」について、車掌長はこう考える。
それは、見聞した情報や知識、今までの人生経験に基づいて、夢を見たり、想像を膨らませる醍醐味だと。

しかしながら、いざ、その「未来」の時間が現実となった「今」、それは瞬く間に「過去」となってゆく…
あくまで感覚的だが、未来を待つ時間よりも、過ぎ去る時間の方が遥かに速い。

待った時間の密度が高ければ高いほど、叶った現実を、瞬時に1秒、1分と過去にする力も大。

そして、その刹那(せつな)こそが、「時間」という誰にも止めることのできない厄介者の悪戯であり、あたかも潔(いさぎよ)く生きるように諭されている気がしてならない…

だから、人は時間を大切にし、その一瞬一瞬を胸に刻み込むような生き方をしなければならないのでは…と車掌長は思ってしまう。

気が付けば、列車は最初の停車駅である南千歳に近づいていた。
 

いい日旅立ち・Twilight Express(第3章)

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2014年12月23日 05:25

宿泊はフランス資本のホテルチェーンであったが、ホスピタリティの良さは一筆残しておきたい。

と言うのは、夜中に車掌見習がお粗相をしてしまい、急遽洗濯したい事態となった。
部屋のホテル案内を見たところ、館内にコインランドリーは無さそう…

朝食前に念のためフロントで尋ねると、やはり館内には無いとのお詫び。
その直後、近所のコインランドリーであれば…と案内してくれた。

お願いするとすぐに、住宅地図のような路地までわかる詳細な地図の複写に所在を印してくれた。
そして、この時間でしたら、もう営業しています、と教えてくれた。

地図を片手に部屋のランドリーバッグをぶら下げて、不慣れな町を歩いた。
4~5分の距離ですと言われたが、歩道は雪で凍っており、なかなかスタスタとはいかなかった。

しかしながら、このような時間がなんとも「旅」らしくて良かった…
思いもしない出来事で、自分の頭の中になかった行動をしていることが愉快であった。

そして、詳細な地図を良いことに、面白がって車の通らないような路地裏の道を選択して目的地を探した。
やがて、某マンションの駐車場の裏から、目指すコインランドリーを発見し到着!

最新の機械で指示通り従い操作してゆくと、最後に携帯番号の入力を勧められた。
これは、出来上がったら自動音声で知らせてくれるという。すごいなぁ…と感嘆。

帰りは地図をポケットにしまい、来た道を戻った。
そろそろ出勤や通学の時間帯で、スーツ姿や学生服の人々が家々から出始めた。

朝食はバイキングスタイルで、種類も豊富で楽しかった。
特に、札幌が発祥のスープカレーが美味で、ついつい3杯も食してしまった。
車掌見習は、最近食べられるようになった納豆ごはんを頬張り、口の周りをネバネバ。

そうこうしていると、携帯が振動して洗濯が終わったことを知らせてくれた。

このホテルのチェックアウトは11時。
トワイライトEXPの出発は14時過ぎ、特に観光もしないのでなるべくホテルで過ごしていたい。
フロントで尋ねたら、1時間くらいでよろしければ無償でチェックアウトを延長しますとのこと。

子連れで荷物も多い一行にとっては、大変ありがたい返答であった。

タクシーを呼んでもらい、札幌駅へと向かう。
通り道だったので、時計台に立ち寄ってもらった。

時計台は行ってみるとガッカリさせられる…とよく聞く…
実際、タクシーの運転手も「えっ!?時計台ですか?!」と聞き返された。

しかしながら、札幌といえば「時計台」。
札幌市民憲章の前章にも「わたしたちは、時計台の鐘が鳴る札幌の市民です」とあるほどだ。

記念撮影をしようと車から降りると、ちょうど鐘が鳴り始めた。
時計台の針が正午を指し、札幌農学校時代と変わらぬ歴史の音を響き渡らせた。

その重厚な鐘の音は、周囲の味気ないビルを見ないように目を閉じれば、ヨーロッパの街並みにいる錯覚に誘われる…

偶然にも鐘の音を聴け、良い気分で札幌駅に到着。
どこかで昼食でも…と考えたが、駅ビル内の飲食店はどこも人で溢れ落ち着かなかったので、予定を変えて38階のJRタワー展望台に昇ってみた。

下界の喧騒は皆無で、ほとんど人がいない天空の空間は、まさに別天地。
薄曇りであったが視界は良好で、遠くは日本海沿いに小樽方面まで見渡せた。

喫茶スペースもあったので、ここで車掌見習は持参のランチ。
しばらく、静かな時間を過ごし、トワイライトEXPとの出逢いに心の準備を整えた。

13時過ぎ、再び下界へ降り昼食を調達。
改札の出発案内を見上げると、「寝台特急トワイライトエクスプレス 14:05 大阪」の文字が、ひときわ輝いて目に映った。

この瞬間、本当に憧れの列車に乗れる確証を得た心持ちになれた。

逸(はや)る心を抑え、出発ホームとなる4番線へと上がった…
 

いい日旅立ち・Twilight Express(第2章)

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2014年12月21日 05:18

この時期、札幌の街はイルミネーションで彩られる。

札幌の「ホワイト・イルミネーション」は、今年で34回目にもなるそうだ。
また、仙台の「光のページェント」も調べたら、今回で28年目と札幌に次ぐ積み重ねがあった。

車掌長がイルミネーションと聞いてイメージするのは、神戸のルミナリエ…
阪神・淡路大震災の起きた年に、犠牲になった方々への鎮魂と追悼、街々の復興を願い、激減した観光客を呼び戻す目的で開催され、いまに至っている。

いまやLEDの普及と省電力の恩恵で、各地で隆盛を誇るイルミネーションだが、あまりに商業的で大規模過ぎてケバケバしさを感じるのは、車掌長ぐらいかもしれない。

まさに経済優先思考で、人が集まりカネが儲かるなら、どこもかしこも「バスに乗り遅れるな」とばかりに、有名デザイナーに頼む人任せのワンパターン。

札幌や仙台、神戸のように歴史や趣旨が明確な「光のイベント」であれば、年ごとに訪れる人が増え、それに比例して電球の数も増えてゆくなら好ましいが、山奥の丘をいきなり電飾の海に変えてしまうような節操の無さには閉口してしまう。

この手のメッキ的なイベントは一過性で終わり、長続きさせて人々の心を癒し、愛されながら歴史を積んでゆけるような施設や場所はごく僅かだと予想する。

しかしながら、言い方を変えれば、その「一過性」なモノを消費者が望んでいるのも否めない。
大規模な敷地を埋め尽くすほどの数千万もの電球を用い、見た目の派手さを競い会わないと集客できないのは、見る側の感度や感性も鈍ったり曇ったりして、表面的かつ打ち上げ花火的な驚きにしか反応できないのかもしれない。

イルミネーションブームに水を差す気はサラサラないが、原発事故とそこで決意したはずの節電意識は、被災された方々以外の人々には、もはや忘却の彼方の出来事になったと認めざるを得ない…

繁華街を避けた中島公園の傍らで宿泊し、「トワイライトエクスプレス・イブ」は静かに更けていった…