雑誌「旅」休刊

カテゴリー:④番線:日々雑感方面 2011年11月22日 06:21

新潮社の旅行雑誌「旅」が2012年1月発売の3月号で休刊になることを知った。

「旅」は元々日本交通公社から発刊されていた。
その歴史を紐解けば1924年(大正13年)4月に、JTBの前身である日本旅行文化協会から創刊された「日本最古の旅行雑誌」である。
車掌長愛読書「JTB時刻表」は1925年4月号が創刊であるから、「旅」の方が少し先輩だ。

「旅」は子どもの頃、まだ鉄道向けの情報や雑誌が今ほど溢れていなかったので、よく読んだ想い出の本だ。
毎月著名人の紀行文やエッセイが掲載され、いま思うととても贅沢な読み応えのある内容だった。
特に日本を代表する鉄道紀行作家、宮脇俊三氏の文章は、いまだ乗らぬ国鉄路線や見ぬ風景にワクワクさせられ、ぐいぐいと誌面に惹き込まれたことを覚えている。

また、鉄道とはジャンルが異なるが、オートバイで日本や世界を駆け回った賀曽利隆氏の紀行文も楽しかった。ちょうど車掌長が学生時代に彼が50ccバイクで日本一周をした単行本に出会い、そのロマンに魅了されたものだった。この本に出会い、鉄道旅行にはない「自由」な旅のスタイルにも好奇心が湧いたものだった。

話は戻るが「旅」の休刊を心から残念に思う。
新潮社に移行し、内容を女性向けにしたり、隔月刊になってからは次第に車掌長もあまり手にしなくなったが、歴史ある「旅雑誌」が無くなるのは寂しい限りだ。
素晴らしい内容の伝統がありながら「売れる」ために、流行に迎合したり便乗するような一過性の内容では、単月の読者は増えても、本来の持ち味を楽しんでいた長年の読者には不甲斐ない感じがしてしまう。

目先の売れるものだけが入れ替わり並ぶ書店の目利きや、それを求める消費者と煽るマスコミ等の媒体。
世の中なんでも「売れる」ことだけが絶対視され、「売れない」ものは悪のごとく隅に追いやられやがてお払い箱となる。
これでは日本は経済大国になれても、文化大国にはなれないだろう。
人が築き上げた歴史や文化、後世に伝承したい事柄の蓄積を、ためらいなく金銭的価値の天秤にかけて一蹴してしまう。
この忌まわしい傾向はやがて人の心もお金で買われ、それと引き換えに大切な「何か」を失うかもしれない。

その失った「何か」は、後になってどんなにお金を積んでも買い戻すことはできないだろう。



 

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