新東名部分開通に思うこと

カテゴリー:④番線:日々雑感方面 2012年4月14日 20:44

本日15時、新東名高速道路が部分開通した。
本来は「祝!」と言うべきであろうが、車掌長は別の視点からこの新東名を見つめてみたい。

このたびの「新東名」は1987年の構想から、25年の歳月と2兆6千億円という巨費をかけての一部開通だ。
今回の開通部分は静岡県内(御殿場JCT~三ケ日JCT)の162㎞。
(ここではあえて記さないが、1㎞当たりの建設費用は庶民感覚からすれば異常であり、それを教育や医療、介護、福祉政策に充てた場合、その恩恵を受ける人のスケールは新東名高速利用者の比ではない。)

これにより従来の東名の渋滞は大幅に減少するとの説明だが、果たして本当だろうか?
確かに、静岡県内に限定すれば当てはまるかもしれないが、東名高速の渋滞が深刻なのは、むしろ御殿場~海老名間や豊川~豊田間であり、新東名が全線開通する2020年度にならないと、新東名本来の役割やポテンシャルは十分生かせないであろう。

だが、今後の人口減少やそれに伴う物流量の低下は、25年前の思惑とは既にギャップがあると思う。

ところで我国の高速道路政策は、昨年の東日本大震災を契機に、「防災」「被災」という視点から高速道路を捉えるようになり、新東名も旧東名不通時の代替(だいたい)ルートという役割を担うようになった。

また、各サービスエリアやパーキングエリアにヘリポートが設置されるなど、従来の高速道路よりもあらゆる災害ニーズや想定に対応する別規格の道路になったと言える。

今後、車掌長も1度か2度はこの「新東名」走行を好奇心から体験すると思うが、おそらく「旧東名」ユーザーになることは必至だ。
なぜか?
それは新東名が面白味のない道路だからだ。

たしかに、カーブが少なく、勾配も少ない道路は走りやすいかもしれない。
だが、せっかく高規格の道路でありながら、法定速度は100㎞/hのままであり、当然スピードが出やすい(出せる)から、速度違反の取締りが強化されるのは目に見えている。
いくら距離が短くなり、従来より200円安く(東京~名古屋間)なっても、違反をしたときの金額はその数百倍以上の出費となる。

何よりも全体の1/3がトンネルばかりの道は、走っていて楽しくない。

ただでさえ、車というのは狭い空間に閉じ込められるのに、トンネルばかりで風景も存分に楽しめないのでは、
まさに精神的な「拘束道路」に思える。

「運転の醍醐味」は、意のままにハンドルとアクセルで美しい風景の中をドライブできることだと車掌長は思う。

ふと気付けば日本は、狭い国土に網の目のように高速道路が整備され、今後も際限なく工事が行われる様相で、日々山々が削られ、田畑や集落が分断されている。

そして、ドアtoドアと時間厳守の流通システムの中で、エコではないトラック輸送が幅を利(き)かせている。
また、鉄道から夜行列車を消滅させた「高速バス」も、本来の輸送効率から言えば、バス1台で運べる人の人数よりも、1本の夜行列車の方が十数倍の人を運べる点で、エコとは言えない。

だが現実は、トラック輸送やバスの方が「安い」ので重宝されている。

そこで疑問に思うことがある…
日本は「便利さ」や「安さ」と、「真のエコ」や「豊かさ」を都合の良いように、使い分けていないだろうか。
つまり、便利・安い=エコ・豊かではない。

言い換えれば、便利さや安さを消費者に提供するためには、想像以上の労力やエネルギーが費やされていることを忘れてはならない。

そして、労力にいたっては多くの「人」が自らの時間や身を削って、その便利さや安さを捻出している。
日本人一人一人が、お互いに便利さや安さを求め合うあまり、実は自分の時間や生活を仕事に裂かれ過ぎて、精神的な豊かさを見失ってはいないだろうか?

開通してしまったものに対し、色々難癖を付けるのは不毛なことかもしれないが、モノの見方として必ずその「光と影」を考えてみることは意義深いと思う。

せめて、この「新東名」が大災害時の代替ルートとして、大活躍するような日が来ないことを願うばかりである。
 

コメント(2件)

たくちゃんさんからのコメント(2012年4月15日 07:01投稿)

新東名、部分開通しましたね。
少し前ですが、「新名神」も開通し、
現在「伊勢湾岸道路」というものも開通しています。
これで、旧道の共有区間は、
東京~御殿場・三ケ日~豊田(静岡~愛知)・四日市~亀山(三重)
ということになったわけです。

で、作ったはいいんですけどね、高速。
すべてのポイントで、渋滞が発生している。

ワタクシの住む中部地方について言いますとね、
週末以外でも豊田JCTでは、10キロ程度の渋滞。
四日市JCTでは、やはり10キロ程度の渋滞。
週末ともなれば、さらに伸びると。
結果的には、到着時間は変わらないということに
なってやいないかと思うんですな。

水道管の本数を2倍にして、取水口と蛇口は一つづつ。
…どうなるかは、容易に想像がつくというもので。

…ということで、「例の集会」の折は、
やはり300系引退で、タバコ吸いにはより厳しさを増した新幹線で、かっ飛ぼうと、考えております。
700系(喫煙車両あり)にあたることを、密かに期待しつつ…。

車掌長さんからのコメント(2012年4月15日 07:57投稿)

たくちゃん様

毎度ご乗車ありがとうございます。

「名古屋は道が広い」という印象がありますが、そちらの高速もやはり、新たな道を作っても、ボトルネックとなる旧道とのジャンクションで慢性的な渋滞を引き起こしているようですネ。

理論上、渋滞がなければ距離が短縮された分、所要時間も短縮されますが、現実には新たな渋滞名所を造り出し、従来よりも時間がかかるようなら本末転倒です。

それにしても、水道管のたとえ話はわかりやすくて良かったです。
車掌長は子どもの頃に遊んだ「水道管ゲーム」を思い出しましたヨ。

人生ゲームの「仕返し」のように、他人の水道管を「破裂」させ、修復している間に蛇口をつないでゴールするのが楽しかったです。

カードゲーム、ボードゲーム全盛の時代に育ったので、そのアナログ感の醍醐味は格別です。
「木枯らし紋次郎」というボードゲームもなかなか渋くてオツでした。

或るマスで止まり、ルーレットを回すと「あっしにはかかわりのねぇことでござんす」の名言をつぶやき、そのままコースを素通りしたり、「お引き受けいたしましょう」と言って、浪人と戦うのも一興でした。

また所持金が小判や一分銀だったのも好きでした。

ところで「例の集会」、近付いてきましたネ!
そろそろ別便で具体的なスケジュールをお送りします。
その際、参考までに700系運用のリストも付けますので、ご活用ください。

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