旅の安全を願う

カテゴリー:②番線:航空、船舶、バス方面 2012年5月 3日 05:55

GW初日、痛ましく赦(ゆる)せない悲劇の事故が起きた。
これは「人災」である。

目的地に向かう眠りの中で、そのまま逝ってしまわれた方々のご冥福を心から祈る。
また、大切な人を「奪われた」方々の悲しみや怒りは計り知れない。

車掌長も知人と後輩を夜行バスの事故で2名失っている。
一つは大学のスキー行事の際に、長野県で早朝の凍てつく川に転落した。
もう一つは東京~名古屋間の夜行高速バス乗車中の追突事故であった。
2つめの事故後、車掌長は夜行バスには乗らなくなった。

世の中「競争社会」だという。
だが、その「競争」とは一体何であろうかと疑問を抱く。
特に、今回の人災の背景にあった「価格競争」は、輸送機関が最も尊ぶべき「人命」を犠牲にしてしまった。
人の命を奪うような原因を生み出す競争など、絶対にあってはならない。

長引く不況で「安さ」が消費者や利用者から支持されるのは重々承知している。
今回、北陸から東京方面へ移動する手段として「ツアーバス」を選んだ方々は責められない。

だが、今後は北陸~首都圏を繁忙期に3,000円台で移動できる「からくり」が露呈したように、他の区間の価格や運行体制などにも注視し、あまりに「安い」のは何かリスクがあると認識せざるを得ない。

「価格競争」「過当競争」というものは、採算割れの仕事であっても、稼動しないと運転資金が回らない、雇用を維持できないという理由で日常的に受注されているようだ。

企画側の旅行会社も、集客の決め手である「価格」にインパクトを与えるため、更なる値引きを要請するという。
しかしながら、その安さには必ず限界があり、その一線を越えた「価格」にはリスクが潜んでいることを忘れてはならない。

近年、総務省が行った夜行バス運転手のアンケート調査で、9割を超える人が「睡魔」によるヒヤリとした体験があることを浮き彫りにした。

また、今回の事故後、多くの運転手が自分たちの置かれている労働環境の不安や待遇の不満を訴え、「自分の家族はツアーバスに乗せたくない」という本音も新聞記事にあった。
そんなツアーバスが、夜間の日本中の高速道路を走っていると考えると恐ろしい実態だ。

車掌長は、全国に際限なく延びる高速道路が夜行バス路線を発達させたことに異論はないが、せめて鉄道との共存があってほしいと願う。
今回の北陸~首都圏間は2年前に寝台特急「北陸」や夜行急行「能登」が廃止となり、その後「能登」が臨時列車として週末や繁忙期に運行していたが、今冬で臨時運行さえも周知されることなく終了してしまった。

1本の夜行列車を走らせるコストは確かにバスより高いかもしれない。
また、JR発足後は他社間をまたがって運行する際は、運賃料金収入も分断され利益が出ずらいとも聞く。

だが、鉄道には多くの人やシステムがあり、安全運行を昼夜支えている。
「夜行」という、本来眠っている間に安全に目的地へ着ける当たり前のことに、不安を抱かせた今回のバス人災によって、「夜行列車」の社会的価値を、今一度再考してもらいたい。

その際「採算」「効率」は他でカバーし、社会的、公共性の視点から夜行列車という選択肢の復活を願いたい。
 

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