人生時計

カテゴリー:③番線:時間旅行、時刻表方面 2012年5月 7日 05:29

専門学校教師時代、飲食店である漫画を見ていて出逢った素敵な考え方がある。
「人生時計」という話だ。
この漫画の作者も題名も全く覚えていないのが、残念でならないが、内容はこうだ。

或る主婦が年々歳をとることに葛藤していた。
ある日、近所の年上のオバサンに、自分の年齢を3で割ってみる「人生時計」の話をされる。
その主婦はオバサンに歳を聞かれ答えると、「ちょうど12時頃ネ」と言われ、まだまだ「これから」があるのヨ!と言われ、その焦燥感がうすらいだ。

正確ではないかもしれないが、こんな話だったと記憶している。

当時、専門学校で教師をしていた車掌長は、よくこの話を学生にしていた。
18~20歳前後の場合、人生時計で言えば6時くらい。

一般的にはちょうど起きる頃で、身支度をして学校や仕事に出かける準備の時間帯だ。
だから、この専門学校時代は社会に出る前の大切な準備時間。
しっかり勉強し、資格をとって、望む仕事に就けるよう、励ましたり動機付けをしたものだ。

ちなみに、車掌長はいま14時半を過ぎたあたり。
午後の眠気覚ましにお茶の時間でも…と優雅なひとときかと言えば、実際の仕事や生活の状況はそんな余裕のあるものではない。

だが、この「人生時計」の話は示唆に富むものが多い。
60歳で20時。夕食も終わり、1日の中では一番リラックスできる時間帯であり、「お疲れ様でした」と周りも労(ねぎら)いたいところだ。

しかし、今は「まだ働き盛り」などと持ち上げられたり、年金がもらえる年齢まで働かなければならないサラリーマン諸氏が多い。
その一方、不況で厳しい雇用環境下、若者の就業率は下がり、働く場が少なく「奪い合い」となっている。

このアンバランスな状況は、日本の病だと思う。
早く、この漫画の「人生時計」のような年齢に応じた「人生の時間」に戻って、精神的に豊かな人生を送りたい。

翻(ひるがえ)って、今の日本はこの人生時計に置き換えると、一体何時なんだろうか?
感覚的には「成熟」した年齢となり、それなりの時間になるように思う。

中国、インドなどは、経済的な尺度で言えば、グングン背が伸びているような歳で朝方の時間となり、アフリカはまだまだこれから「目覚め」てくるだろう。

ここで車掌長は思う。
働き続けることが、経済成長を持続させることではないだろう。
日本も40年ほど前は働けば働くほど、経済成長し、人々は見た目の豊かさを享受してきた。
当時のJTb時刻表を見ても、年々輸送力増強の足跡がわかる。
だが、その成長は無限ではあるまい。

どこかで、別の価値観へ舵(かじ)を切らなければ、この国はパンクしてしまいそうだ。
幸いにも昨日、全国の原発が全て停止した。
これはニュースの1つで収まることではない。
違う価値観へ舵を切れるかどうか、という貴重な契機だ。

原発を動かし続けることが、経済成長を持続させることではないだろう。
日本は「原発」という人災と、「津波」という自然災害を、世界的な教訓として今後活かさなければならない。
そして、そのための叡智(えいち)や技術、人と人とのつながりこそが、世界での信頼やこの分野でのリーダーシップを取れる国になれると考える。

成熟した時間を過ごしているはずの日本は、もはや世界を「まねる」時分ではない。
きちんと、自国の主張をできる文化も、技術も、立場や交流もあるはずだ。
グローバル社会や競争と言っても、結局国内の似たような分野の会社同士で、共倒れになっているのが痛々しい。

いまこそ、日本という国の「時間」に気付き、日本にしかできないことや立場から、物事を発信してほしい。
そんなことを、「人生時計」は教えてくれているように思う。
 

コメントお待ちしてます!

コメントはこちらからお願いします

名前

電子メール

コメント