レオナルド・ダ・ビンチと解体新書
カテゴリー:④番線:日々雑感方面 2012年5月13日 15:33
五月晴れの今日、渋谷のBunkamuraへ専務車掌と行った。
ザ・ミュージアムで開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチ~美の理想~」観賞が目的だ。
開館10分ほど前に着いたが、さほど行列は長くなく、前売券を購入済みだったので、スムーズに館内へ。
まずはお目当ての作品を人垣ができる前に見たく、それらの前へ向かった。
「ほつれ髪の女」、「岩窟の聖母」、「衣紋の習作」他、様々な「モナ・リザ」があることも興味深かった。
以前、ルーヴル美術館で見たダ・ヴィンチの「モナ・リザ」とは違うそれぞれの描写に、巨匠の影響を強く受けた弟子や後世の画家たちの息遣いが聴こえてきそう…
専務車掌は「岩窟の聖母」がお気に入りのようだった。
レオナルド・ダ・ヴィンチは「万能人」と称される。
絵画、彫刻、建築、土木、人体etc…幅広い知識と技術、感性を持ち合わせたスーパーマンだ。
特に、人体への好奇心や探究心があり、人体解剖も自ら施したという。
単なる「芸術家」という括りには納まらない稀有(けう)な人物だ。
展示の終わり付近に「ウィトルウィウス的人体図」があった。
車掌長はこの絵を見て、ふと「解体新書」を思いだした。
中学の歴史教科書に出てきた時から、常に好奇心の奥底にあった書物の1つだ。
話は飛ぶが、「解体新書」は杉田玄白がオランダ語で書かれた「ターヘル・アナトミア」を翻訳したもの。
そして、その扉絵や数々の臓器や骨格、部位などの挿絵を描いたのは、あまり知られていないが小田野直武(おだのなおたけ)という人物だ。
彼のことを初めて知ったのは、角館の武家屋敷を散策していた際に、たまたま入った「青柳家」だった。
そこで「ターヘル・アナトミア」原本と、「解体新書」初版本があったことに大きな衝撃を受けた。
なぜこんなところに…?それが実直な感慨だった。
もともと絵の上手かった直武は、平賀源内との運命的出会いによって解体新書に関わった。
そして、源内が直武に伝授した画法こそが、西洋の「遠近法」や「陰影法」による立体的な描写であった。
車掌長は今日、レオナルド・ダ・ヴィンチが「空気遠近法」や「ぼかし」という技法を完成させたことを知った。
そして、それが「解体新書」にも約1世紀の時間を経て伝承されたことに、何か感慨深いものを受け止めた。
ダ・ヴィンチと小田野直武。
両者がこんなタイミングで繋がったことに、ほのぼのとした嬉しさが込み上げた。