ななつ星in九州

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2012年6月20日 05:13

 先日、JR九州がクルーズトレイン「ななつ星in九州」の運行を発表した。

来年10月の話だが、既に車両の製造が進み、コース概要も明らかになった。
車両はJR九州で多くの車両デザインを手がけ定評のある、水戸岡鋭治氏によるもの。
「和」や「旧」を基調とし、そこから「洋」や「新」の良さを生むような、水戸岡氏のセンスが随所に光っている。

また、コースは1泊2日と3泊4日の2コースがあり、4日間コースのルートを見ると「肥薩線」を通ることがわかる。
肥薩線はループ線やスイッチバックがあり、「日本三大車窓」の1つに数えらえる素晴らしい路線だ。
ここを走ることは、ルート選定をした方に拍手を送りたい。

しかしながら、この列車の残念なところは、富裕層が対象というところだ。
3泊4日コースの場合、乗車するクラスによって1人38~55万円だという。
運賃・料金以外に食事、観光、1泊の旅館代を含んでいるそうだが、これにはガッカリさせられた。

2年ほど前、水戸岡氏が、「九州で寝台列車を走らせたい」という趣旨のコメントを何かの雑誌で見て、とても期待をしていただけに残念でならない。

水戸岡氏は、国鉄時代の古いディーゼル車や特急車両などを、走行路線の風土やテーマに合わせた車両デザインを施し、外観も内装も鉄道の魅力に新たな息吹を吹き込んでくれた御方だ。
そして、何よりも多くの子供にその列車に「乗る夢」と「感動」を与えてくれた。

だが、「ななつ星」にはそんな子供の夢は届かない…

最近、つくづく思うことがある。
世の中、なぜ富裕層ばかりを対象にした商習慣になったのかと…

正確に言えば「二極化」なのであろう。
しかしながら、殊に鉄道の寝台列車では「二極化」は当てはまらない。
なぜなら、純粋に夜間移動する安価な「夜行列車」自体がないからだ。

両方の選択肢がある中で「二極化」なら、まだ救われるが、九州に限らず全国的に寝台列車は消滅傾向だ。
故に、「カシオペア」以来、十数年ぶりに機関車も車両も新造される「JR九州版寝台列車」には期待していた。

鉄道好きな子どもや、親子連れが、楽しみや夢として「手の届く」列車こそ、活力のない日本に元気を与えてくれると考える。

長い目で見れば、その子たちの「感動」や「喜び」、「経験」が、大人になって新たな文化を築くのだと思う。

 

コメント(6件)

エリート街道さんさんからのコメント(2012年11月20日 14:16投稿)

貧乏人が乗れるくらい安くすると客層が落ちてしまいます。だからある程度値段を高く設定するのは当然かと。

そもそも飛行機や新幹線と違って、カシオペアやトワイライトEXP、ななつ星といった夜行列車は、目的地に早く着くためのものじゃないんだから、乗らなくても生活には困らない。

車掌長さんからのコメント(2012年11月21日 05:14投稿)

エリート街道さん 様

この度は「哲×鉄 ブログ本線」ご乗車ありがとうございました。

エリート街道さんの仰る通り、カシオペアやトワイライトEXPぐらいの料金設定なら良かったと思います。
これらは運賃や料金が明確ですし、少し頑張れば手が届きそうです。

先日、某百貨店の100万円の福袋の中身がこの「ななつ星」だったそうです。
ななつ星のツアーは、先月申し込みが始まり、6倍超えの競争率で予約が取れないことが背景にあるようです。
この福袋も僅かな数ですから、今度はこちらを買うのも大変かもしれません(笑)

このような高額な福袋を買える方々がいるのも、今の日本。

エリート街道さん、素敵なお名前ですネ。
その街道は歩道でしょうか、車道でしょうか。
どんな場所を通る道かなぁ…と想像します。
海沿いか、山中か、街中なのか、里山か、それとも天空か…
その沿道からはどんな景色が見えるのでしょうか。

そして、その道を往来する人々はどんな様子でしょうか。

大変興味がありますので、お時間があったら、ぜひお教え願います。

それでは、またのご乗車をお待ちしております。
ありがとうございました。

寝台好きさんからのコメント(2013年3月22日 22:05投稿)

私は車掌長さんと同意見ですね。
まだまだ寝台列車に対する需要はあるはずですし、JR側がきちんと掘り起こせていないと思っていますし、営業努力で安くすることも可能なレベルだと考えています。

ただ、分割民営化以降、社をまたぐ寝台列車が組みにくくなったこと、あまりに新幹線中心になりすぎてしまったことなど、厳しい状況は変えられないだろうなとも感じています。

子どものころの憧れだった寝台特急、次世代に残せるといいのですが。

車掌長さんからのコメント(2013年3月23日 00:00投稿)

寝台好き 様

この度は「哲×鉄 ブログ本線」ご乗車ありがとうございました。

「子どものころの憧れ」…素敵なその言葉に心から共感いたします。
いつの時代であっても、子どもの憧れるモノがある世の中であってほしいと車掌長も考えます。

憧れがあるということは、言い換えれば、それを手にするための努力や工夫をすることでもあります。

そして、想いが叶った瞬間の充足感やそうした体験の積み重ねは、必ずやその少年を心身ともに逞しくし、自立への歩みを援助するように思うのです。

車掌長も「寝台特急」は憧れであり、高嶺の花でした。
急行や各駅停車の夜行列車の座席から、追い抜かれたり、すれ違うブルートレインを見送っては、いつかは自分もあちらの窓から景色を眺め、横になってぐっすり眠りたい…そんな想いを抱いていました。

しかしながら、実際に乗れた時は寝台車でありながら、眠るのが惜しかったことを覚えています。

寝台好きさんが仰る通り、寝台列車の需要は確実にあるはずです。それは、1月6日付の乗務日誌でも綴りましたが、サンライズ出雲・瀬戸が既に実証済みです。

確かに昔と違って、ビジネス客の利用を望むのは難しいかもしれませんが、快適で旅情を味わえる車両を新造したり、走行ルートや目的地にこだわりを添えれば、新たな需要を掘り起こせると思います。

新幹線中心の営業方針も、JRの経営戦略としてはよく理解できます。
「ひかり」よりも数百円上乗せできる「のぞみ」主体のダイヤを組み、折り返し時間を短縮し、本数を増やせば笑いが止まらないドル箱商いが可能です。

しかしながら、その引き換えとして、食堂車やビュッフェ、個室、ダブルデッカー、こだまの車内販売等が「効率」の名の下に消えていきました。
新幹線にも僅かながらに存在したそんな「旅情」の隠し味を、最近はことごとくファーストフード化させてしまい、国際的には日本の鉄道の醍醐味として大きな損失だったと思います。

せっかくの「旅」も「人生」も、その道中(プロセス)も楽しめた方が、より豊かなように感じます。

そして、誤解を恐れずに申し上げれば、一見「無駄なこと」や「余計なこと」と思われがちな「遊び」や「のりしろ」の部分に、大人が真剣に取り組んだり楽しむ姿勢こそが、子どもの憧れをより広く育む社会だと思うのです。

そうすれば今流行りの「さとり世代」も少なくなるかもしれません。
やる前から結果のわかることには関わらない…という風潮は寂しい限りです。

長々と綴り申し訳ありませんでしたが、寝台好きさんの再びのご乗車を心からお待ちしております。

また、ぜひ懐かしいエピソード等ありましたら、この場でご披露いただき、ともに「時間旅行」を楽しめれば嬉しいです。

本日はご乗車ありがとうございました。

higonokazeさんからのコメント(2013年9月29日 11:41投稿)

肥薩沿線をルートに選んでくれた・・隼人駅から真夜中に阿蘇まで突っ走るんだから三大車窓の景観も三大急流の球磨川も見られず・・
鹿児島本線はオレンジ鉄道へ売り飛ばしたからルートにできない必然がある。
それに気付かず能書きとは。

車掌長さんからのコメント(2013年9月29日 16:55投稿)

higonokaze 様

このたびは哲×鉄「ブログ本線」ご乗車ありがとうございました。

higonokazeさんの仰ることに、全く同感です。
せっかく肥薩線を走るのに、あのダイヤは惜しいと思います。

しかしながら、たまたま手元にあった1971年1月の時刻表の肥薩線の頁を開いてみましたら、その当時は夜行列車が健在でした。

あいにく、今回のななつ星は車窓こそ楽しむことはできませんが、星空の下、ループ線やスイッチバックを走るのも夢がありますネ。
乗車は叶いませんが、もしそんな列車の光跡を俯瞰できたらロマンチックだと思います。

また、肥薩オレンジ鉄道も「ななつ星」の走行ルートに入っていれば良かったとつくづく思います。
たとえ、JRから切り離されたとしても、北斗星やカシオペアは青い森鉄道やIGRいわて銀河鉄道を走っています。

来月からの運行を皮切りに、年々ルートの選定や通過時間帯にアイデアを凝らすと、より良いクルーズが楽しめることでしょう。

きっとリピータも増えるでしょうから、常に新しい魅力が提供されることに期待します。

話は変わりますが、「higonokaze」というお名前、とても素晴らしいです。列車の名前にあればぜひ乗ってみたいです。

それでは、またのご乗車をお待ちしております。
ありがとうございました。

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