世界に誇れる仕事
カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2012年7月14日 05:12
日本が世界に誇れる仕事の1つと言えるものがある。
新幹線の車内清掃だ。
これは海外の鉄道では、真似のできない仕事だと思う。
「テッセイ」という会社をご存知だろうか。
正式には「鉄道整備株式会社」
この会社の業務は、東京駅で折り返す東北・上越・長野新幹線の車内清掃だ。
折り返しの標準時間は僅か12分。
この時間には乗客の降車及び乗車が含まれるので、実質の清掃は7分だという。
この会社の業務は、スタッフ1人1人の優れたスキルと高いモチベーションで行われ定評がある。
キビキビとした動きや車両が入線する際に、スタッフがホームに並び一礼して迎え入れる光景に感銘を受けた方も少なくないだろう。
体力と集中力を要する激務だが、その高いモチベーションは、いかに保たれているか…
それは「ことばの力」に鍵があるという。
主任以上の立場の人が携行する2冊の冊子、これが源泉のようだ。
1つは「ノリ語集」といい、仕事の「ノリ」をよくする合言葉がアイウエオ順に並んでいる。
あ:ありがとう、い:いいネ!、う:うまくいくよ!etc…
それはお互いに掛け合うことで気持ち良く働けたり、気分良く動け、忙しくても相手を思いやる気持ちの余裕も生まれる。
一方、もう1つは「ノリません語集」といい、それらの言葉を使うと、仕事の「ノリ」を悪くする言葉が並んでいる。
通称「デビルノート」とも呼ばれているそうだ。
その一言で、チームワークが乱れたり、モチベーションを下げる言葉と言える。
か:ガッカリだね、こ:こんなもんかよ、ほ:ほんとダメだね、や:やる気あるの?etc…
車掌長も「ことばの力」はとても大切だと日々思っている。
しかしながら、つい無意識にデビルノートにあるような言葉を発していないか注意したい。
全く余談だが、車掌長は過去のどの職場でも、共感の「だネ!」「いいネ!」をよく使っていた。
きっと乗務日誌を愛読されている方の中に、覚えのある方も多いだろう。
これも「ノリ語」といえば当てはまる。
仕事もプライベートも、使う言葉しだいで「気の持ちよう」が変わる意味は大きい。
なんのコストもかからない、誰もが実践できる「言葉の力」で、気持ちの良い職場や学校、家庭、ひいてはそんな社会が築ければ、とっても素晴らしいことだと思う。
最後に、この「テッセイ」の冊子に書かれている言葉を引用させていただき締めくくりたい。
あなたの話すその一言。
その一言で励まされ、
その一言で夢を持ち、
その一言で腹が立ち、
その一言でガッカリし、
その一言で泣かされる。
ほんのわずかな一言が、
不思議な大きな力を持つ。
ほんのちょっとの一言で。
一言よく人を生かし、
一言よく人を殺す。
コメント(9件)
くろちゃんさんからのコメント(2012年9月 4日 05:19投稿)
実はそのテッセイにいたんだけど会社の裏側はかなりブラックでした。
休みの相談をしただけで男性社員に侮辱的な言葉で精神的に追い詰めるように退職勧告されたよ。
PTSDやうつ病になって電車のホームに飛び込んじゃったら会社はどう責任取るんだか。
下っ端は真面目に頑張ってるのは事実ですが上層部が陰湿でダメですね。
パワハラやサービス早出残や会社ぐるみでの事件のもみ消しは当たり前に行われてます。
福利厚生はいいのですが、成績評価制度や社員登用制度が悪用されています。
会社に逆らわないで会社の言うことを聞く従順な奴隷を作るための制度だといえます。
夢を壊してすいませんが現実なのでカキコしました。
車掌長さんからのコメント(2012年9月 4日 06:06投稿)
くろちゃん様
この度は哲×鉄ブログ本線ご乗車ありがとうございます。
くろちゃんさんのコメント、車掌長も共感することが多々あります。
もちろん「夢を壊す」とは全く感じませんでした。
車掌長もこれまでに、様々な職業を経験してきました。
働きやすく、やり甲斐のある会社や組織もあれば、全くその逆の理不尽なところもありました。
世間に対して「貢献」や「夢を与える」、「環境に優しい」といった美辞麗句を並べ、イメージアップを図る会社が多いように思います。
しかしながら、その美辞麗句を提供または達成するために、本来担保されるべき「従業員満足度」を満たす会社・組織は、まだまだ少ないように思います。
車掌長はこの従業員の満足度がなければ、真のサービスは提供できないと思っています。
また、不況の折、働く側の地位や立場は著しく低下していることを痛感します…
そんな状況下、純粋に目の前の仕事を精一杯こなしている方々の姿にも、率直に胸を打たれるものがあります。
おそらく、くろちゃんさんもその職場で理不尽な処遇や、嫌悪的な思いを被ったことがあったとお察しします。
車掌長もそうなのです。
車掌長は、人との出逢い、就いた職業も職場も「縁」だと考えます。
従って、長くお付き合いできるかどうかも「縁」しだいなのです。
「哲×鉄」の根幹概念である、人生も旅も色々な「生き方」や「行き方」があることを、一緒に探してゆければと願います。
末筆ながら、貴重なコメントをありがとうございました。
またのご乗車を心からお待ちしております。
workさんからのコメント(2013年8月21日 03:05投稿)
私は元従業員でしたが『ノリ語集』という冊子の存在自体知りませんでした。まあそれを実行している正社員は皆無に等しいですが。テッセイは24時間365日働きたい人には素晴らしい会社です。なにしろ列車が遅れれば食事、待機の時間は無くなりましたから。毎年夏になると熱中症で倒れる人が出るんですよね。しかし交代要因がいないものだからそれでも早退はさせない。在職中はいろいろなかたと話しましたが、要するに管理職の既得権益を守りたいわけです。大企業の子会社となるとそれなりの目標や結果を出さないとつぶされてしまう。調べて見ればお分かりいただけると思うのですか、JRだけでも多くの清掃会社を抱えているので、親会社が納得できる結果を出せていない子会社は再編の対象になるでしょう。それを防ぐためTV紹介などで一定の成果を挙げたわけです。仕事としては良い環境だと思います。ノルマや売り上げ目標など関係ない職場なので言われた通りにやってれば済む話です。しかしスキルアップや昇給を期待してはいけません。低所得者並みの給与でコツコツと働ける人がほしいのです。
車掌長さんからのコメント(2013年8月21日 21:29投稿)
work様
この度は、哲×鉄ブログ本線ご乗車ありがとうございます。
workさんの元従業員としてのコメント、大変貴重かつ示唆に富む内容だと思いました。
やはり、現場で働いていた方の所感というのはリアルです。
「テッセイ」は昨年10月に社名を変更していたのですね。
今では「JR東日本テクノハートTESSEI」と名乗っているそうです。
一般的にはメディアでも頻繁に取り上げられ、海外からも取材に来る"日本の美徳"的仕事と見られていますが、全スタッフが気持ちよく働けて初めて、その評価がホンモノになるのだと感じます。
結局のところ、7分の清掃で折り返す最大の目的は、極限まで運行本数を増やし、有償座席稼働数を引き上げて最大限の利益を生み出すことにあります。
そして、それを実現させるには、各スタッフの数秒のムダも許さないような効率的な働きが求められることは言うまでもありません。
ただ、それは繰り返しになりますが、それ相応の処遇や休息(休日)があってこそ成せるはずです。
そうでなければ、人間は機械ではありませんので壊れます。
人は誰しも、どんな仕事であっても、自分なりにどこかに"やり甲斐"を見い出し、それを糧に日々頑張っていると思うのです。
しかしながら、最近の企業に多く見られる「働かせ方」は、非常に巧みです。
つまり、そうした各人が本来持っている前向きさを利用し、処遇の低さに目を向けさせない巧妙な「ポジティブ思考」を刷り込むのです。
そして、その時に大活躍するのが"メディアの力"だと言えます。
企業はそのブランド力を誕生させるツールとして、メディアを最大限に利用しています。
もちろん、新幹線に気持ち良く乗車していただくために、世界一の車内清掃ができることは「誇り」だと言えます。
単なる清掃会社ではなく、一歩踏み込んだ付加価値を生み出すことも素晴らしいことです。
実際、TESSEIも、もはや単なる親会社の下請けではない存在になっており、親会社のイメージアップに大貢献しています。
ただ、ただ、そのブランドに恥じない、その会社で働いていることが自分の「プライド」だと確信できる人の多さが、本当は何よりも尊いことなのだと思うのです。
この夏も猛暑続きですが、そんな劣悪な作業環境の中で頑張っている方々がいるからこそ、気持ち良く旅ができることを忘れてはいけないと感じました。
末筆ながら、workさんのコメントに重ねてお礼申し上げます。
ありがとうございました。
ぜひ、純喫茶で美味しいコーヒーでも飲みながら、色々お話したいと思いました。
まだまだ暑い日が続くようですが、お体ご自愛ください。
匿名さんからのコメント(2015年2月15日 00:10投稿)
私も、ついこの間まで従業員でした…清掃する仕事ではなく「おもてなし」が仕事だという…わりには先輩従業員はお客様の事をお客様が居るホーム上で「客、客!」と連呼し、子供が多く乗車していた汚れた車内を見て、「ガキ」が汚しやがってと言い…お客様の前で「トイレ」に行って来るからと大きい声で言い…お客様に聞かれた事も分かりませんと断言し…おもてなしの気持ちもない従業員が長く勤める会社でした。
「おもてなし」でイメージアップし成功してると世間では思われている様ですが…「おもてなし」は「まやかし」…それに気づいた人や上層部にその思いを口に出した人は必然的に辞めさせられます。
いくら社名を変え本を書きイメージアップしても旧い体質が根強く今も残っている会社だと思いました。
記事からだいぶ経っていますが…ちょっと言いたくてコメントさせて頂きました。
車掌長さんからのコメント(2015年2月15日 06:01投稿)
匿名 様
この度は「哲×鉄」ご乗車ありがとうございます
過日「世界に誇れる仕事」と題して書き、匿名さんのご乗車で御三方目となりました。
匿名さんが仰るように、2年半余りの時間が経過していますが、なお、この記事に対してのコメントをいただき、大変ありがたく思っています。
それと同時に、この清掃会社の「美徳」とする業務が、「本物」かどうか、車掌長の中ではその真偽性が浮き彫りになったとも言えます。
もちろん、御三方とは逆の意見や評価を持った方からのコメントをいただいていませんので、その真偽性を天秤(てんびん)にかけるのは早計かもしれません。
しかしながら、御三方がお勤めになって、実際に見聞きしたテレビには映らないその会社の別の姿は、大変リアルであったと同時に、「おもてなし」という言葉が一人歩きしている最近の世の中に、何か霧に包まれたような疑問を抱く結果をもたらせたことは否めません。
その清掃会社にしてみれば、テレビ等のマスコミで持ち上がられ、海外にまで知られることになったこと自体は、会社としてはこの上ない喜びであったと察します。
一方、そのことによって、世間からの注目度は飛躍的に高まり、今までその清掃の姿を気にもしなかった人々も、その業務に関心を抱くようになった結果、幹部以外の社員や現場スタッフの精神的・体力的な負荷も相当に背負わされたと、お察しします。
人間の行う「仕事」というものは、機械と違って「心」がありますから、どれほど素晴らしいマニュアルがあっても、それを実践するスタッフが会社への「共感」や「納得」と、会社からの相応な「待遇」がなければ、ビジネスとしての「おもてなし」は成り立たないと思います。
なぜならば、「おもてなし」とは、"表なし"とも言われ、「表も裏もない」心からの行動を指す場合があるからです。
今般の清掃会社に限らず、日本でも有名な会社では「裏」や「からくり」がある"おもてなし”が、実は横行しているのではないでしょうか。
"おもてなし"という言葉を商売人が使うと、途端に、その言葉の「尊さ」や「品性」が落ちて嘘臭くなるのが残念です。
それは商売人が都合良く、働く人の「良心」や「ホスピタリティ」だけに依拠し、さほど設備投資を要せず安上がりにモノをやサービス売ろうとする卑しさが、見え隠れするからかもしれません。
そして、そのブランドづくりにマスコミ等の媒体がフル動員され、美しい「物語」が、"取り急ぎ"出来上がるのでしょう。
本物の「ブランド」や「暖簾(のれん)」の信用や重みは、一朝一夕には獲得できません。
また、お客様だけに目を向けるのではなく、そのお客様を大切にしてくれる従業員が、気持ち良くプライドを持って末永く働けることが、遠回りかもしれませんが、その会社の美徳を継続できるのだと感じます。
大変長くなり恐縮でしたが、末筆ながら匿名さんからのコメントにお礼申し上げます。
ありがとうございました。
さいずさんからのコメント(2015年5月12日 23:03投稿)
私も元従業員でした
現場のパワハラは当たり前にあります
学歴、字の読み書きできない人でも主任や総括になれます。
上層部にゴマする人が上にあがれます。
現場ではお局さまがたくさんいます
女性独特の妬みでのいじめがあります
いつもイライラしてるかたのストレス解消のようです
そんな方々にゴマする人達が長くいられる会社です。
夢を壊すようなことを言ってすみません
さいずさんからのコメント(2015年5月12日 23:06投稿)
何回も失礼します
🔼
学歴関係なく、字の読み書き、文章書けない、語彙力ない人でも主任や総括になれます
車掌長さんからのコメント(2015年5月13日 05:03投稿)
さいず 様
この度は「哲×鉄」ご乗車ありがとうございます。
この話につきましては、さいず様を含め4人もの方からコメントをいただきました。
この清掃会社は、テレビや雑誌等で「きつい・汚い・危険」という、いわゆる3Kの職場を「感謝・感激・感動」の新3Kに変化させ、ミラクルな会社として称賛を浴びています。
しかしながら、4名の方々はどなたも元従業員からのコメントで、主観的な内容はありつつも、事実の一端を発してくれたのだと受け止めています。
どんな会社もそうですが、「イメージ」は大切ですし、死活問題でもあります。
過密なダイヤでフル稼働する新幹線は、折り返しの清掃時間が鍵になりますが、従来の3kな職場では求人もままならず、世間の注目を浴びるような光を当てるような、前述の新3k的な話題づくりが行われているのかもしれません。
ですから、マスコミでは「光」の部分は注目し、持ち上げますが、「影」の部分は蓋をする傾向にあるのでしょう。
しかしながら、4名の御方以外に、逆な立場からのご意見はありませんでしょうか?
たまたま同じようなコメントをくださった、4名の方々の個人的な主観なのか、或いは組織的にいわゆる「ブラック」な会社なのでしょうか…
素敵なイメージが独り歩きしているだけなのか、それとも世界に誇れる仕事なのか…
世界に誇れる仕事であるならば、世界に誇れる報酬や待遇を働く人は享受しているのでしょうか…
もし、一般的もしくはそれ以下の報酬で、働く人の「やり甲斐」や「責任感」に依拠した会社であるならば、やがては働き手にそっぽを向かれかねないと思います。
「哲×鉄」は日本語でのサイトなので、海外の方(含む日本に居住する外国の方)が、これをお読みになっていることはないかもしれませんが、海外の文化から見て、この仕事や働く姿はどう映るのか興味深いところです。
単に、「日本のおもてなし」や「日本人はスゴイ」といった皮相的な見方にとどまらず、「労働観」や「労働文化」として、もっと立体的かつ多角的に、この話題は今後も継続できれば幸いです。
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