伊豆山温泉 水葉亭

カテゴリー:⑥番線:温泉方面 2012年8月10日 04:40

先日、伊豆山(いずさん)温泉を訪れた。
日本三大古泉の1つに数えられ、源泉の「走り湯」が有名な場所だ。

地理的には湯河原温泉と熱海温泉に挟まれ、つい素通りしてしまいがちな温泉地…
だが車掌長は、大規模な歓楽的温泉地よりも、こちらの方が好みである。

ここを訪れた目的は「伊豆山花火大会」。
関西からスカイツリー観光で上京する親戚にぜひ見せたく、途中下車をしてもらう旅程を組んだ。
そして、その宿に選んだのが「水葉亭」だ。

海沿いの山肌に立つ屹然(きつぜん)たる威容は、かつての高級旅館の面影を随所に残している。
施設の老朽化が相当に進んでいることは否めないが、車掌長はこの水葉亭がお気に入りとなった。

それは古き良き「昭和」の時間が、奇跡的にもそのまま止まっているいるからだ。
時代に取り残されたように…

圧巻な広さを誇る「王朝大浴殿」や、海の眺めが素晴らしい「眺望大露天風呂」。
大小幾つもの宴会場や、コンベンションホール。
最上階のスカイラウンジとバー。
懐かしさが漂う「トロピカル展望大円形プール」。(何がトロピカルなのかは不明だが、ネーミングが昭和チックだ。)
そして、この施設群が山裾に立体的に配置され、それらを結ぶ複雑な通路や構造自体が楽しい。
今では「ムダ」として排除されるものが、どれも残っている。

折角の旅行だから、新しい施設や快適なサービスを求めるのは客としては当然であろう。
確かに最近のホテル・旅館は、洗練された空間や至れり尽くせりなサービスを提供しなければ客が集まらない。

しかしながら、車掌長は水葉亭のようなホテルの存在こそ、いま貴重なのだと思う。
それは、日本人が過去の時間に置き忘れてしまったものが、沢山保存されているからだ。
それが具体的に何であるかは、泊まった本人が気付くことであろう。

みんながみんな助け合って生きていた頃の近所や地域、親戚、家族との絆。
古いものを大切にする心。
己の欲ばかりでなく、他人を気遣う心の在り方…

車掌長はそんな感慨を発見できるきっかけが、この水葉亭にあったと思う。
もし、快適さのみを求めてここを訪れれば、ハード・ソフト両面の「粗(あら)探し」の旅で終わるであろう。

今回、1才から76才までの親戚一同26名が専用の大広間でとった食事は、甥っ子や姪っ子が畳の上を走り回り、大人は酒を注ぎ合い歓談を楽しんだ。
その光景は車掌長が子どもだった頃の30数年前を思い出させてくれた。

また、目的の花火大会は、部屋の真ん前で打ち上げられ、視界をはみ出る迫力と体幹に響く音に、みな驚嘆の声を上げ喜んでもらえた。

余談だが車掌長は、館内の「熱海国際大会議室」という名称の"飛鳥の間"で、いつの日か自らの時刻表展示会を行ってみたいと思った。

その日まで水葉亭が、今のままで頑張っていてほしいと勝手ながら願う…
 

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