バスと赤ちゃん

カテゴリー:④番線:日々雑感方面 2012年11月28日 05:50

小さな子供を連れて電車やバス、飛行機に乗るのは大変なことだ。
泣かないようにと乗るまでの万全の準備や心構えと神頼み、乗って大泣きした際の動揺や周囲への気遣い…
これらを考えると、乗り物など乗りたくないと思うが、現実にはそうもいかない。

先日、ある雑誌のコラムが話題となった。
そのコラムを書いた或る漫画家が、国内線の機中で着陸寸前に泣き叫んだ赤ちゃんに嫌気が刺し、その親や客室乗務員にクレームを言い、着陸準備中の機内を出口に向かって走り始めた。
そしてそれでも収まらず、降りた後に航空会社へ対策や姿勢を問い質(ただ)したそうだ。

世知辛い世の中だなと思っていたら、こんなエピソードを新聞で知った。
「バスと赤ちゃん」の話だ。
道徳の副読本にもなっているそうなので、子どもさんのいる方は知っているかもしれない。
話の概要はこうだ。

混雑したバス車内で、若い母親が抱いた赤ちゃんが泣きだした。
皆の迷惑になると思った母親が、目的地の手前の停留所で降りようとした。
すると、運転手がここから歩くのは大変と言って車内にマイクでこう呼びかけた。
「子どもは泣くのが仕事。どうぞ皆さん、少しの時間、一緒に乗せて行ってください」と。

数秒して車内の乗客全員が拍手で応えた…
その母親は「今でも思い出すと目頭が熱くなる。とても大切な、心に沁みる思い出」と結ぶ。

これは時代こそ30年ほど前になるが、都心の路線バスで実際にあった話だ。

今は少子化で、かつ個人の快適な空間や環境を誰もが求める時代。
それは自分の家の中だけに留まらず、不特定多数の様々な生活環境や事情を持つ人々が往き交う「社会」という空間においても、その快適さを求め、阻害されれば苛立つ人々。

もちろん、公共施設や車内で子どもが遊びで騒いだり、走り回ることには叱る必要はある。
また、大人が大声で喋ったり大音量で聞く音楽はマナー違反であり、自ら制止すべきである。

しかしながら、赤ちゃんの泣き声だけはどんな時代になっても、コントロールすることは困難だ。
また、そのためにハード面で解決しようとすれば、膨大なコストがかかり遅々として進まない。

せめて先述のバス運転手のような善意や、そこに居合わせた乗客の温かな心持ちが世の中に広がることを切に願う…
 

 

コメント(2件)

たくちゃんさんからのコメント(2012年11月28日 13:10投稿)

僕もその話をネットのニュースで知りました。

遊びでふざけたり、騒いだりしている子供を叱ることは、すごく大切です。
大人なら、そうしないといけないと思います。
「遊びで騒ぐ」なんてことを知らない子供がする、悪意のない生理的行動に
そんな事言われましてもねぇ。

ずいぶん大人気ない方だと思いましたんですよ。
そういう方がテレビやラジオでもてはやされ
それなりに社会的な地位も築いていると。

まぁ、どうなってるんでしょうかね。

最近見たテレビの話で恐縮ですが、
マレーシアという国で、
日本の「蚊取り線香」を製造・販売している会社の社長さんが、
その国で外国人に対して与えられる最高位の称号
「タン・スリ」を与えられているとの事です。

もちろん、マラリヤや伝染病を媒介する「蚊」から
マレーシア国民を救ったことは、大きな理由のひとつでしょうが、
彼は、そこで得た利益を、積極的に
貧しい人々や子供たちの為に寄付をしたり、
学校や施設を建てたりと
そういった活動を行っておられるようです。
そういう行動含めて、すべてが「タン・スリ」に値すると。

久しぶりに「本当のお金持ち」を
見たような気がしました。

いくら地位やお金があったからといって、
乳児のする生理的な行動に、いちいち目くじらを立てるような
お金持ちにはなりたくないものですな。

そんなことを考えてしまいましたですよ。

車掌長さんからのコメント(2012年11月29日 04:46投稿)

たくちゃん 様

毎度ご乗車ありがとうございます。

そして、素敵なお話をありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げます。

「タン・スリ」のことは初めて知りました。
そのような心意気のある日本人の社長もいてホッとしました。

たくちゃんさんのお話で思ったことがあります。
今のご時世、誰もが自分のことで精一杯なことはよくわかります。
しかし、あまりにお金を中心にモノ事を考えすぎではないか…と。

特に富裕層と呼ばれる方々や、そうした方々を「お客様」と崇(あが)めている商魂に対して、日本のビジネスの貧困さを感じます。
また、その商売やサービスを支えているのは、病気をしても何の保障もない非正規の人々かもしれません。

経済の活性化とは、中間層を中心とした裾野の広い消費に支えられてこそ言えることであり、人々が日々の生活に不安を覚えずに、安心してお金が使える世の中だとイメージします。

また、これからの時代は「お金持ち」よりも「時間持ち」の人の方が気持ちが裕福であると思います。
更には「心持ち」のある人こそ、自分の人生を豊かに過ごせるのではないかと考えます。

少しのお金で豊かな気持ちになれる人もいれば、沢山のモノに囲まれていても心が満たされない人は大勢います。

どんな国で生まれ育っても、物事を前向きに捉え、何か問題に直面しても解決に向け努力できること、夢が持てること。

それこそが、実は「真の豊かさ」ではないか…と思うのです。

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