田中正造没後100年

カテゴリー:④番線:日々雑感方面 2013年9月 4日 04:17

♪渡良瀬川で見る夕日を あなたはとても好きだったわ

森高千里さんが歌う「渡良瀬橋」は、車掌長も大好きな曲の1つ。
そんな夕日がきれいな街を流れる”渡良瀬川"も、100年余り前はある事件で有名になった。
日本初の公害事件と言われる「足尾銅山鉱毒事件」だ。

この事件を世に知らしめ、生涯をその被害に遭った人々の救済や援助、公害問題の解決に奔走した人が、政治家・田中正造。
今日2013年9月4日は、田中正造が亡くなって100年にあたる。

車掌長が田中正造を初めて知ったのは、小学校の国語の授業であった。
確か6年生だったと思うが、正造が明治天皇に直訴をする際に取り押さえられている挿絵が教科書に載っており、非常に印象に残っている。

そして、政治家とは私利私欲で動くのではなく、困っている人々のために働き、生きることが真の使命なのだと子どもながらに感じたものだった。

足尾鉱毒と生涯をかけ私財も全て投じて闘った正造…
その命を潰えたときに残した全財産は、袋1つに入った河原の石ころと鼻紙、聖書、憲法の小冊子、日記などの所持品のみだったという。

しかしながら、正造が亡くなって100年を経た今、光輝く思想や名言を現代人に遺したと言える。

それは、「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」の言葉…

ここで「真の文明」とは何か、真逆となる「偽の文明」とは何か…などという、大きなテーマが車掌長の頭の中を駆け巡る…

正造の上述の言葉を借りれば、真の文明とは「自然との共生」だと考える。
一方、自然を破壊し、物質中心や経済成長優先の「命よりもカネ」を重視するような方向性が、偽の文明であるように感じる。

文明はこれまで、経済成長によって得た皮相的な豊かさによって人々の支持を保ってきたと言える。
だが、高度経済成長期に日本各地で起こった公害問題や、東日本大震災で明白となった福島原発事故の恐怖によって、それは「偽の文明」であったと多くの人が気付き始めた。

約1世紀前の足尾鉱毒事件も、今日の福島原発事故も、形は変われど根底は同じ。
人間が管理しえない文明の暴走が、平穏だった暮らしや故郷を奪い、常に命の危険と不安との背中合わせで生きてゆかざるを得ない境遇を与えてしまった。

没100年となる日、田中正造が遺してくれた言葉の意味を、いま一度噛みしめ、文明社会の在り方を一考しなければならないと感じた朝であった。
 

コメント(4件)

希望者挙手さんからのコメント(2013年9月10日 00:47投稿)

久しぶりの夜行列車です。

足尾銅山には、バイクツーリングで3回ほど行きました。
私の娘たちは小学校の社会科学習で行きました。
今では人も少なく寂しい感じですが、自然豊かでいい所です。田中正造がいなければ、この自然は残らなかったんだろうなと思うと、今を生きている我々は何を学んできたのだろうと、反省しなければなりませんね。

オリンピックの東京開催が決まりましたが、震災復興がオリンピック特需の陰に隠れないよう、見守っていきたいですね。

ところで、渡良瀬と聞いて真っ先に頭に浮かんだのは「ダムカード」!ただいま、マイブームです。
国土交通省と水資源機構が管理する全国のダムのうち300近いダムの管理事務所で無料配布されているカードです。

昨年11月より「渡良瀬貯水池」でもダムカードが配布されるようになり、行ってみたいなと思っていました。
ちなみに、私の故郷にある「利根川河口堰」でも配布されていますので、興味ある方はもらいに行ってみてください。

今月は、湯の小屋温泉に1泊ツーリングに行く予定です。周りにはたくさんダムがあるので、楽しみです。

湯の小屋温泉といえば、車掌長と一緒に日帰りで行きましたね。
当時のテーマソング「いつまでも変わらぬ愛を」をBGMに、鬼七(七味唐辛子を鬼のようにふりかけた様な紅葉・・・でしたね)の峠道を走って辿り着いた温泉は最高でしたね。今では見ることのできない「裏見の滝」にも行ったり、吹割の滝や華厳の滝など、今思えば滝巡りしてましたね。
しかし、本当に楽しかったですね。ぜひ、また行きましょう!

車掌長さんからのコメント(2013年9月10日 23:03投稿)

希望者挙手 様

毎度ご乗車ありがとうございます

「いつまでも変わらぬ愛を」は、ポカリスェットのCMでしたネ。
爽やかなイメージがある反面、もう会えない大切な人への想いを秘めたような、そんな切なさも感じる曲でした。

当時、お互いに大好きだったドライブ・テーマソングから、もう20年余りもの時が流れたのですネ…
カーオーディオも、まだまだ"カセットテープ"の時代でした。
6連奏のCDオートチャンジャーが、憧れだった頃です。

"オニシチ"だった紅葉も、瞼を閉じれば鮮やかに、その情景が思い出されます。

ところで!
「ダムカード」などという、集めてコンプリートしたくなるような情報をありがとうございました。
さすが希望者挙手さんです。もう何枚ほどお持ちなのでしょうか。
車掌長はそのカードの存在を全く知りませんでした。

車掌長が訪れたことのある中で好きなダムは、岐阜県の御母衣ダムや、新潟県の奥只見ダムです。

前者は、我が国初の「ロックフィルダム」で、コンクリートのダムに見慣れていたせいか、岩石や土砂で積み上げたダムにはとても感動しました。
後者は、奥只見湖と周囲の人を近寄らせないような山々の神秘的な美しさが印象に残っています。

余談ではありますが、久々のご乗車、嬉しく思います。
先日も専門学校勤務時代の懐かしい街での再会、楽しい時間旅行を過ごすことができました。
ありがとうございました。

お互いにどんな"時"の流れの中にあっても、いつまでも変わらぬ仲を大切にしてゆきたいと思いました。

また、この哲×鉄ブログ本線に毎度ご乗車いただいている希望者挙手さんと、もう一人の御方とで、新たな構想を練っている件、お力をお借りできれば幸いです。

それでは、湯の小屋温泉へのツーリング、楽しんできてください!

希望者挙手さんからのコメント(2013年9月11日 23:20投稿)

高速道路の料金所(当時はETCなんてありませんでした)を抜けたら映画TOP GUNの主題歌「Danger Zone」でしたね。

ダムカードですが、かくいう私も自力では3枚しかゲットしてません。他に8枚もらったカードがあります。

御母衣ダムはいいですね。奥只見といえば、バイク泣かせの長~いトンネルのシルバーラインを思い出します(笑)

今、私が注目しているダムは、夕張シューパロダムです。大夕張ダムを水没させて作ってしまうスケール、車掌長もご存じであろう鉄道遺産の三弦橋も水没してしまいましたが。

そうそう、ダムカレーなるものもありますから、どうぞご賞味あれ!今回のツーリングの楽しみの一つでもあります。

新しいことにチャレンジするのは、お任せください。
だって「チャレンジ精神を忘れるな!」がモットーの専門学校にいたのですから(笑)

車掌長さんからのコメント(2013年9月12日 23:08投稿)

希望者挙手 様

毎度ご乗車ありがとうございます

「チャレンジ精神」は懐かしいですね!
話の腰を折って申し訳ありませんが、車掌長は中学時代から旧国鉄が始めたキャンペーン"チャレンジ20,000㎞"に夢中でした。

国鉄全線踏破を目指すものですが、国鉄合理化でどんどんローカル線が廃止され、フェードアウトしてしまいました。

ところで、鉄道遺産「三玄橋」の水没と聞いて思い出した場所があります。
北海道にあるタウシュベツ川橋梁です。

ここは、旧国鉄士幌線の橋梁が季節によって水面下にあったり、湖底から姿を現したりして、幻想的な光景を目にすることができます。

車掌長は夏に見たことがありますが、ローマの水道橋を彷彿させるような、アーチ型の美しい造形にしばらく時間を忘れて見入ってしまいました。

ダム建設には水没する集落の話が、切っても切り離せません…
穏やかだった山村に、建設の推進と反対で争いを巻き起こします。
きっと、お金の力も少なからずあるのでしょう。

お金では決して買うことのできない、人々の助け合いやお互いさまの「無償の精神」を破壊してしまうのです。
なんの損得勘定もなかった平穏な暮らしに各人の値札がつき、誇りや尊厳も値踏みされるのです。

果ては、人々の連綿とした絆は二分され、伝統文化や慣習の息の根を止めてしまいます。

きっと各地のダムにも、そんな悲哀が湖底に沈んでいるのだと思います。
車掌長も観光でダムを訪れることがありますが、いつも近隣の資料館に足を運び、往時を偲ぶことにしています。

そして、湖底に沈む前の村落の写真を見るたびに、ある感慨が湧き起こります。

周囲の山々や天空の大自然は、人間の営みを見てどう思っているのだろうか…と。

4件のコメントがあります → まだまだコメントお待ちしてます!

コメントはこちらからお願いします

名前

電子メール

コメント