四万温泉で癒されて

カテゴリー:⑥番線:温泉方面 2014年1月 5日 06:17

「脱・主流派宣言」という見出し、朝日新聞を購読されている方は、ご存知かもしれない。
年明けから非常に面白い連載記事で、今朝が4人目。

誰もが目指す富士山頂を狙わず、6合目から麓を目指し散策するツアーの案内人。
「24時間営業はしない」とコンビニをたたみ、客に寄り添う酒屋を営む店主。
東京を離れ故郷の産品をPRする、地域おこしの若者。

そして、今回は「1杯50分待ちですが…」と、丹念に珈琲を抽出する喫茶店のマスター。

どの御方も、車掌長にとって共感できる、魅力ある人々だ。

24時間休みなく動く世の中…
多くの人が、何に急(せ)かされているのかもわからず、まして考える余裕もなく、日々の時間をこなしている。
それが、世の中の主流派なのかもしれない。

だからこそ、連載記事の「脱・主流派宣言」に共感してしまう。

車掌長も若い頃は、「先を急ぐ生き方」の特急に乗車していた。
だが、その行き着く先がイメージできず自分を見失い、或る時にその列車を降り、鈍行に乗り換えた。
そして、ようやく、身の丈に合った生活のスタイルやリズムを、見い出せたように思える。

経験上思うことは、本流から外れてみて、初めて見えるもの、わかることがあるということ…
濁流のような本流にも、必ず淵のような、流れの及ばない平穏な場所があるということ。

このような場所に身を置いてみると、世の中に流されず、どこに重きを置くべき価値や優先順位があるかが見えてくる。

そして、それらの蓄積が、日々の充足度をごく僅かずつながら、育んでくれることを知った。

ところで、この年明け、当車掌区でのんびり四万(しま)温泉を訪れた。
途中、どこか観光するでもなく直行し、宿で最大限滞在できる時間を楽しんだ。

渋滞を避けようと早目に出発したら、全く混まずに済み、昼過ぎには到着できた。
ここは18年前、TVチャンピオン第4回温泉通選手権に出場した際、競技の舞台となった想い出の地だ。
それ以降、何度か訪れているが、いつ来てもほとんど何も変わらぬ風景や雰囲気に心が癒されてしまう。

四万温泉が大好きな理由は、大手チェーンの飲食店やコンビニが存在しないこと。
昔ながらの個人商店が、観光客や湯治客を相手に、その地域に落ちるお金の範囲で商いを生業としている。
客の呼び込みもなく、静まりかえった温泉街を「寂しい」と感じたり、変に戸惑う人もいることだろう…

昼食に入った或るラーメン店でのこと。
年老いたご夫婦で切り盛りする、手造り餃子が自慢の店だが、店に入ったときは他に客はいなかった。
薄めの皮で包まれたアツアツの餃子と、昔懐かしい味の醤油と味噌ラーメンも、とっても美味しかった。

やがて、周りの店が満員で流れ込んできた人々で、食べ終わる頃には満席で相席にもなった。
だが、注文も取りに来ず、急ぐ気配もない親父さんに、客の苛立つ空気が漂い始めた。

そして一言、「これから注文の方40分はかかります」と…
呆れて出てゆく客もいたが、都会の何でも客に媚びて、詫びて、マニュアル通りに頭を下げるチェーン店ではないのだから仕方あるまい。
もし、そんな客と店のやりとりが「おもてなし」だとするなら、大きな勘違いだと思う。

今朝読んだ50分待ちのコーヒーの話が、そんな四万温泉での1コマを思い出させてくれた。
旅行の時でも、日常の感覚や欲求から離れたり忘れたり、のんびり過ごすこともできない本流の渦中とは何かを…

 

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