余市蒸留所(哲×鉄車掌区慰安旅行)

カテゴリー:③番線:時間旅行、時刻表方面 2014年9月 6日 05:09

来道4日目。ニセコで迎えた朝は爽やかであった。

ニセコのシンボル、蝦夷富士こと「羊蹄山」には雲がかかっていた。
日差しは強かったが、空気は乾燥し気温は18℃。普通の人にはもう一枚ほしいかも…

予報を見れば、お天気もまずまずのようだ。
今日はニッカウヰスキー余市蒸留所を訪れる予定だったので、ひと安心。

余市蒸留所は8年前、たくちゃんさん夫婦が訪れた際の話を聞いて以来、訪れたかった場所…

ニセコからは車で1時間ほどで到着。ちょうどガイドツアーに間に合うタイミングであったが、車掌見習もいるので、自分たちのペースで歩ける「フリーコース」で受付をした。

広い敷地に歴史を感じさせる建造物が整然と並ぶ光景に胸が躍る。
竹鶴政孝が夫人リタとともに、「日本のスコットランド」を夢見て、生涯をかけた北の大地…

そして、世界唯一の「石炭直火焚蒸留」を継承する昔ながらの製法に、竹鶴政孝の描いたウイスキーづくりへの理想と情熱に想いを馳せてみたかった…

ニッカウヰスキーは1934年7月2日、「大日本果汁株式会社」として設立。
今年が創業80周年となる節目となり、ぜひこの機会に訪れたいと考えていた。

昭和9年という時代に、竹鶴政孝が「日本人に本物のウイスキーを飲んでもらいたい」という、ただそれだけの想いを胸に抱き、それだけに生涯を捧げた人物の「時間旅行」を、ほんの断片でも共感したいと思った。

ところで、「NIKKA」と言えば"髭オジサン"と言えるほど、トレードマークにもなっている「キング・オブ・ブレンダーズ」を思い浮かべる。
札幌の歓楽街すすきの交差点に、堂々たる風格の電飾看板を目にした人も多いであろう。

幾つもの香りを利き分けるというその御方に、ウイスキー博物館に入ってすぐお会いできた。
子どもの頃、家にあったウイスキー瓶の主に会え、思わず一礼してしまった。

ウイスキー博物館の展示物は、もっとじっくり時間をかけて見たかったが、専務車掌と交替で車掌見習の相手もせねばならず、またの機会とした。

博物館見学後、車掌見習は借りたベビーカーで眠り始め、再び敷地内を散策。
見学用に開放している一号貯蔵庫内には、整然と空樽が並べられていた。
空樽とは言っても、原酒の芳醇な香りが外まで漂い、心地よい場所であった。

ウイスキーの原酒が増えるごとに、貯蔵庫の数も増えて、現在では26棟あるという。
それらの庫内では、ウイスキーが熟成の「時」を静かに重ねていることを想像すると、車掌長の「時」に対する感性が満たされ、ささやかな幸せに包まれた。

おそらく自分自身がこの世にいない頃に、誰かの喉を潤す原酒も、きっとこの中にあるのだろう…
ふと、90年カセットテープに例えた自身の人生が、B面に入ったことを思い出してしまった。

一通り見学し、最後の楽しみは「原酒」を買うことであった。
原酒は、単一の樽から直接ボトリングされたモルトウイスキー。

蒸留所では、様々な個性のモルトウイスキーを創り出すため、樽の材質や使用回数、焼き方、サイズを変えて貯蔵するそうだが、これこそが樽ごとに唯一無二の原酒を生み出す魅力だと思う。

しかしながら、この原酒販売は大人気で、売店に残っていたのは「5年」のみ。
10年、15年は完売で、次回の入荷時期は数週間先とのことであった。

せっかくなので「5年」を購入。樽番号は407617。
一期一会の琥珀色の浪漫にとりつかれた車掌長は、早く自宅に戻って香りや味を楽しみたい衝動に駆られた。

また、もうひとつ余市蒸留所限定販売の「余市12年・ピーティ&ソルティ」のミニボトルを購入した。
名前から潮の香りを連想し、スコットランドのアイラ島のシングルモルトウイスキーと似ているのかなぁ…などと期待を膨らませた。

午後は、再び連泊となるニセコへ戻って、牧場で車掌見習の自由時間。
デコボコの牧草地を歩き回ったり、トラクターに牽いてもらう馬車のような面白い乗り物遊びに興じた。

明日は、のんびりと新千歳空港へ向かい、東京へ帰るだけの日。

これで、今夏の哲×鉄車掌区慰安旅行の雑多な記録は終わりにしたい。

 

コメント(2件)

たくちゃんさんからのコメント(2014年9月 8日 07:06投稿)

ずいぶんと久しぶりの乗車になります。
皆様、お元気でいらっしゃいますでしょうか?

ここ最近も、保線担当は、相変わらずの開店休業状態でございます。
トラブルがないということは、実に良いことです。

さて、今回は、ワタクシたちのつたない思い出話にも触れていただき
まことにありがとうございました。
当時の風景が懐かしく思い出されました。

Peaty and Solty をご購入とのこと。
いや、実にうらやましい。
ワタクシが購入いたしましたのはSoft and Dryでしたが
当然、そちらは既に手元にはございませんでね。
ワタクシたちの胃袋に、思い出と共に健全に納まっておりますよ。

最近は、余りの生活の大変さに、
あのころのように流離っておりません。
流離うことに憧れを抱きつつ、日々のよしなしごとに終われる毎日でございますよ。

随分、お会いしていませんね。
何とかワタクシたちも時間を作りたいと思っておりますが
現状の状況を打破しないことには、なかなか難しいです。
そのために、多少のお金もかけて、いろいろやっておるんでございますが、
すぐに結果に反映されるものでもございません。

とにかく頑張って、少しでも早く、
皆さんと以前のような生活ができるよう
日々、乗り切ってまいりますよ。

私たちは、なんとか元気です。
皆さんも、お身体ご自愛ください。

車掌長さんからのコメント(2014年9月 9日 21:35投稿)

たくちゃん 様

久々のご乗車ありがとうございます

日々のたゆまない保線のおかげで、哲×鉄も無事運行できること、心から感謝しております。

この場を借りて、そのご尽力に敬服しますとともに、お礼申し上げます。

念願の余市にも、この度やっと訪れることができ、たくちゃんさんの感動を追体験できた感慨に耽っております…

あそこでしか、手に入れることのできない価値のある「味」に感動しました。

ぜひ、いつの日か、小樽あたりに宿をとり、お互いにドライバーとしてではなく、列車で余市を訪れ、あれこれ試飲を楽しみたいものですネ。

具体的な当てがなくとも、何か先の「楽しみ」をもつことや、「夢」を見ることは、日々の生活に潤いを与えてくれるものと感じます。

また、どんなにか、しんどい時期があっても、そんな当てのない楽しみがあれば、踏ん張れるような気もします。

車掌長は、以前、そのような「楽しみ」さえ持てぬほど、見失うほどに、自分なりの絶望の淵に陥った時期がありました。

絶望の淵とは言っても、その概念や基準は、人それぞれであり、世の中には、客観的にもっと過酷な境遇の人が存在することも、重々承知しています。

しかしながら、あるきっかけで、そんな車掌長なりの絶望の淵から這い上がる手をさしのべてくれる人がいて、ほぼ同じようなタイミングで、たくちゃんさんご夫婦との縁も深まったことを、無上の喜びに感じています…

そして、そんな御縁の延長線上に、この「哲×鉄」誕生の縁も由来もあったのだと信じております…

たしかに、いまは仰る通り、大変な時期かとお察しします。

具体的な手助けがなかなかできないことも、歯痒さがありますが、たくちゃんさんの持ち前のセンスや、仕事に対する責任感、こだわり、情熱が報われることを、誰よりも願ってやみません…

ぜひ、少しでも報われたときは、そちらでも、東京でも構いませんので、祝杯しましょう!
大奮発して「函館」での祝杯も、オツかもしれません。

末筆ながら、たくちゃんさんもお体には、くれぐれも気を付けて…

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