老舗駅弁調整元の廃業に思うこと

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2015年2月26日 05:19

新聞で残念な記事を目にした

JR北海道が来月末をもって、特急列車での車内販売を大幅に廃止するという。
特に、札幌と網走や稚内を結ぶ特急については、全列車から車内販売が消えると知った。

理由はもちろん「採算が取れない」こと。
これで浮く費用は年間2,000万円らしい…

JR北海道は、安全に関わる重大な事故を起こしたり、世間を騒がせた不祥事が相次ぎ、組織体制や財務状況の立て直しに心血を注いでるのは重々承知している。

しかしながら、その事業規模からしてみれば、年間2,000万円の費用削減のために、それ以上の価値がある「旅情」や「文化」をみすみす放棄するのは、長い目で費用対効果を見通した際に、賢明であったかどうかは個人的に疑問が残る。

一方、これはJR北海道のみの問題では終わらない影響もあった。

それは、石北本線の遠軽(えんがる)駅において、名物駅弁「かにめし」を販売する調整元の「岡村弁当屋」が、廃業を決めたこと。

売上の9割超を特急列車への納品が占めていたから…と理由の弁。

1個1,000円の駅弁を、多いときは1日100個ほど納品していたそうで、その納品先であった特急の車内販売が無くなれば、自明であることは否めない…

この売り上げから単純に考えると、多い時で1日10万円ということは、平均して月250万円とすれば、年3,000万円前後となる。
JR北海道の年2,000万円の経費削減の為に、年3,000万円の売上がある老舗零細業者は廃業…

車掌長は経済について全くの素人だが、なんか矛盾していないだろうか?
そして、こうした現象は、おそらく日本各地で起きているのだろう…

「お金」は経済において「血流」と同じ、と聞いたことがある。
そうであるならば、人間の体は血流が止まれば死んでしまうように、経済もお金の流通が断ち切られたなら、その部分(地域)は、壊死(えし)してしまうであろう…

毛細血管は全身の隅々まで酸素や養分を届ける、人間の生命維持に不可欠な組織であるように、地方経済の末端を担う中小零細業者も、日本経済を支える重要なその構成者であるはずだ。

この調整元は昭和初期から、遠軽の街の発展と衰退を目にしてきた。
このたび、自らもその灯を消すことになったが、自身の理由でないことが誠に残念だ。

車掌長は、初めて北海道を訪れた高校2年の春休みに、この「かにめし」を食べた。
上野発の夜行列車と青函連絡船を乗り継いで北海道へ渡り、更に函館での夜景観賞後に再び夜行列車に乗車し、札幌で特急列車に乗り換えはるばる網走へ向かう途中で出逢った味であった。

最後にもう一度、ぜひあの味を…と思うが、さすがに道東は遠い。

もし、これをお読みの方で近々道東方面へ行かれるなら、ぜひこの駅弁を味わっていただきたい。
そして、確実に手に入れたいなら、予約をしておくことが必須。

日頃、どこで食べてもほぼ変わらないコンビニやファーストフード、チェーン店の味に馴らされた舌が、その駅弁の滋味溢れる味わいと食感にどう反応するか…

それは、自身で体感する以外に術(すべ)はない。

また、昔から変わらぬ包み紙も魅力的であった。
時代に迎合しない素朴さとわかりやすさに、個性的なインパクトがあった。

末筆ながら、調整元の岡村弁当屋さんにおかれましては、長い間の営業お疲れ様でした。
そして、北海道ならではの味覚を「駅弁」という形で楽しませていただき、誠にありがとうございました。

 

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