柏戸イス

カテゴリー:④番線:日々雑感方面 2015年3月24日 05:23

先日、久々に「一目惚れ」という感覚を味わった。

そのお相手は椅子。

今月初め、所用で某学校を訪れた際、ロビーに置かれていた椅子だった。
ドッシリとした重厚感と、それとは裏腹に木目の優しさと美しさ、温もりを感じた…

遠くから眺めてもインパクト大。
散々見つめたあげく、ようやく座ってみると、絶妙な包まれ感…

思わず、これが欲しくなり、どこのメーカーなのか気になったら、控え目な銘板が貼られていた。
そこには「天童木工」とあった。

早速、家に帰って天童木工を調べたら、その椅子の名前もわかった。
「柏戸イス」とあった。

その由来は、山形県出身の大横綱「柏戸関」が横綱昇進の際、この椅子を寄贈したとのこと。

価格も横綱級…
とても手が出ない。

この柏戸イスがきっかけで、或る日、天童木工の東京ショールームを訪ねてみた。
場所は浜松町駅から歩いて5分ほどの静かな場所だった。

玄関のこじんまりしたロビーは無人だったが、見学希望の旨を伝えたら、係の人が付き添い館内を案内してくれた。そして、車掌長が某学校で柏戸イスに一目惚れした話をすると、その学校名を言い当てた。

このショールームにも、柏戸イスが鎮座していた。
早速、一礼をするような想いで腰をかけてみた。

先日座った時と同じ、至福な座り心地が蘇った。
係の人は、説明を続けてくださり、素材や工法など1つ1つが手間のかかることばかりであった。

そして、気に入ったのが「どんなにお金を積まれても、作れない場合もあります」との一言。

それは、素材となる木材の乾燥に20年を要するからだという。

また、天童木工さんで販売している机や椅子、棚などは、創業以来そのデザインを変えていないシリーズもあり、そのお宅で二世代、三世代に渡って、修繕しながら使われるものも多いという。

きっと、そのテーブルや椅子には、時の流れが造形した丸みや手触りの温かみがあるのだろう…と羨ましくなった。

車掌長も、20年後の自分へのプレゼントに、柏戸イスを注文したくなったが、仮に支払が20年後でも構わないと言われても、手が出せないだろうな…と、高嶺の花ならぬ「高値の椅子」にため息をついた。

しかしながら、ほんのひととき、心豊かになれる一目惚れした椅子との出逢いに感謝し、味わい深いショールームを後にした。
 

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