JAPAN RAIL PASS

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2015年11月29日 06:43

先日、たまたま見ていた情報番組で「ジャパン・レイル・パス」を取り上げていた。

このパスは聞き慣れない方もいらっしゃると思うが、訪日外国人が利用できるJR周遊券。
「のぞみ」や「みずほ」に乗れない等の例外はあるが、基本的には全国のJRの新幹線や特急を、一定期間乗り放題となる切符だ。

この切符は国鉄時代からあり、車掌長もそんな切符を買える外国人が大変羨ましかった。
今まではさほど話題にならなかったが、近年の訪日外国人増加に伴い、今回取り上げられたのだと思う。

番組内容は、外国人観光客は「移動時間の長さを厭(いと)わない」という趣旨。
そして、そんな外国人を誘客し観光してもらいたいという、某自治体の取り組みの紹介だった。

具体的には、フランスでワインを作っている或る外国人を例に、取引先の招待で訪れた日本で、仕事を終えて帰国までの時間を北海道へ足を延ばし、地元ワインを楽しむというものであった。

先ず、東京から北海道まで鉄道で移動する。
来春になれば、北海道新幹線が函館まで開業し約4時間で結ばれるが、現在は東北新幹線「はやぶさ」を利用し、新青森で在来線特急に乗り換えても6時間は要する。

日本人の多くは、東京から北海道への移動手段に空路を選ぶだろう。
だが、このフランス人は、「鉄道に乗って景色を眺めながら、どれくらいの距離があるのか感じたい」と語っていた。

日本人の同行記者は、その移動時間を長く感じたようだが、そのフランス人は「行程を楽しめた」と満足そうであった。
そして、格安の周遊券を利用して浮いたお金を、レストランでの美味しい食事やワインに充てることができ、更に心が満たされたとコメントしていた。

そんな内容が、僅かな時間で過ぎ去った短い番組であったが、これは今の日本人が享受しがたい、とても豊かな旅の時間の使い方だと思った。

日本の国民性もあるが、移動時間は極力短い方が歓迎される。
それは、取得休暇や出張自体に、時間的にも精神的にも余裕がないことも一因であろう。

その結果、日本人の旅の楽しみ方は、概ねパターン化されたり、価値観が均一化されてゆく…
そのトレンドは、とにかく短時間で、移動も観光も宿泊、グルメ、土産…と、貪欲に慌ただしく時間を消費し、ほんの瞬きほどの物欲を充足させているのかもしれない。

そして、その充足感は持続性や賞味期間も短く、自分の栄養として取り込めないまま消化不良で、次の旅の消費欲へと意識が移ろいでゆくのだろう…

しかしながら、このフランス人の旅は本質的な価値観や目的が違う。

本来の「旅」は、移動時間という舞台装置があって、自分自身を「日常」から「非日常」へと、気持ちや思考を切り替えられるからこそ、旅行後の自分の栄養になるのだと、車掌長は考える。

言い換えると、旅の移動時間というものは、神社の「参道」のような存在なのかもしれない。
そのどこかに、鳥居のような結界点があり、自分自身を「非日常」へ誘う仕掛けだと思える。

今回の例を車掌長に当てはめれば、青函トンネルが「結界」と言える。

長いトンネルを潜(くぐ)れば、何か未知な景色や驚き、発見、出逢いがあるように思えてくる。

そして、移動時間が長いほど、その感動や実感は「旅」をリアルな自分自身に近づけてくれたり、認識させてくれることだろう。
「あぁ、自分はこういうことを考えていたり、心地良いと思ったり、心が満たされるのか…」と。

飛行機で1時間半ほどで着いてしまった北海道であれば、まだ「日常の自分」のままであり、日常と変わらない物欲や精神状態で物事や時間を消費してしまう。

それは、居住地や勤務先でしている行動を、旅先に移してやっているだけと変わりない。

旅の醍醐味や価値観は、もちろん人それぞれで結構なのだが、移動時間を楽しめる外国人の心持ちと時間の余裕には、共感するものが多々あった。

 

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