「夢ハウス・あずさ号」乗車

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2017年5月 4日 04:47

夢は叶う…そんなことを実感させてくれる体験をした。

風薫る五月、GW後半突入前日が車掌見習の通う幼稚園の開園記念日で休みだった。
ならば…と、車掌長も急遽代休を取り、以前から体験してみたかった宿の予約を取った。

その名は「夢ハウス・あずさ号」
2年ほど前、列車として泊まれる宿(施設)を探していた折、見つけた宿だった。

しかしながら、その頃はまだ車掌見習が小さすぎて、連れて行っても記憶に残らないだろう…と機会を探しながら温存しておいた。

当日は6時半に車掌区を出発、関越・上信越道を通り、9時過ぎに上田城に着けた。
昨年「真田丸」で賑わった余韻を感じながら、藤が見頃となった城跡を散策した。

上田駅で車を置き、北陸新幹線に1区間だけ乗車。
3月から車掌見習と始めた「鉄道ふたり旅」信州版ミニを、専務車掌も加え敢行した。

佐久平で小海線に乗り換え小諸へ。
ディーゼルカーの車窓からは、遠くの山々の頂には残雪が光り輝き、手前の山々では新緑が芽吹き、淡い緑や濃い目の緑がパッチワークのように混在し、まさに「山笑う」春の到来を楽しませてくれた。

小諸到着後、駅前の食堂で昼食をとり、懐古園へ向け跨線橋を渡った。
懐古園入口となる三の門は、小学6年の移動教室で来た際に集合写真を撮ったが、当時とほとんど変わらない光景に懐かしさが込み上げた。

三の門を潜(くぐ)り本来であれば、城下町よりも低い位置にある全国的にも珍しい「穴城」の城跡を見学したかったが、さきほども上田城に行き、車掌見習に我慢を強いたので、ここは車掌長が譲って隣接の児童遊園地に足を向けた。

ここは市営とあって入園料も不要で、幼児向けのアトラクション利用時のみ、のりもの券を買うシステムで、メリーゴーランドやミニSLなどがお客さん待ちの貸切状態だった。

のどかな時間が流れ楽しかったが、個人的には敷地中央に鎮座していた長野県警航空隊のヘリコプター「初代やまびこ」に目が留まった。
この機体が、日航ジャンボ機墜落事故の際に生存者発見に尽力したことを知った。

再び小諸駅に戻り、次のしなの鉄道の列車まで時間があったので、車掌長単独で駅周辺を散策。
長野新幹線開業で東京を結ぶメインルートから外れ、寂れた印象は否めないが、昔ながらの駅舎の佇まいやラッチ(有人改札)を見ると、心が和んでしまう。

また、駅前の路地裏には飲食店が肩を寄せ合うように並び、往時の活気が想像できた。
こうした路地が形成する独特な「街」の造りや空気は、アイデアや活用次第で人が訪れる仕掛けになり得るなぁ…と感じた。

そんな感慨に耽(ふけ)り115系電車で上田に戻ると、チェックインの時間が近づいた。

上田駅の駐車場で宿の住所をナビに入れてみると、3㎞弱、10分足らずと算出された。
千曲川を渡り、左方向に車を走らせると、ほどなく看板が現れ右折、宿に到着した。

宿の入口横には、「あずさ」の先頭車両がガラス越しに見えた。
胸高鳴る瞬間であった。

玄関の引戸を開け、ご挨拶をすると駅長の鈴木さんが出迎えてくれた。
そして、外観からは想像がつかない広い空間と、1両の列車が目に飛び込んできた。

家屋内にあずさ号が停車している…
ちょっと、現実と夢想とを錯覚してしまうが、今宵の宿であることを次第に認識した。

車掌長がこのように段階的に目の前の現実を受け入れる心の準備をしたのと裏腹に、車掌見習はそういう面倒な思考のプロセス無しに、本能的にあずさ号の中へと消えて行った…

その姿を見て、鈴木駅長が早速、車掌見習を運転席に案内してくれた。
マスコンキーを運転台に差し込み、幾つかの操作方法を教えて下さった。

宿泊中は、運転席に上がり放題、車内放送や鉄道唱歌のオルゴール音、自動ドア開閉も可、そして滞在のシメは翌朝の警笛を一笛鳴らせる…
このようなことを含め、1車両丸ごとを貸切で滞在できるのであった。

車内は畳敷きであるが、座席の一部はオリジナルなまま残され、走行こそしないものの、どこかの駅に停車中であるような楽しみ方はできる。

この183系の座席は車掌長も子どもの頃に乗ったときに、簡易リクライニングシートの背もたれのスライド感が、子どもながらにも不自然で好きではなかったが、それも今こうして座るとノスタルジーという味付けが加わり、なかなか良い座り心地であった。

1時間ほど、車掌見習とノンストップで遊び、お風呂をいただいた。
こちらは家庭用の大き目の風呂だが、目的が温泉ではないのだから問題無し。

そして、風呂上りの食事までに再び車両での運転ごっこや、ホームに無造作に置いてあった近江鉄道の方向幕操作に夢中になった。
とくに、車掌見習は幕回しが好きで、色々な行先を自身で自在に操れるようになった。

やがて夕食の刻を迎え、食事処へ。
アツアツの釜飯と手打ち蕎麦が美味であった。

翌朝6時過ぎ、車両にメイン電源が入ると、車掌見習が早速運転台に上がりたいとせがむので付き合った。
制帽をかぶり朝から車内放送や乗降ドアの開閉を楽しんだ。

チェックアウトの時刻が迫ると、いよいよあずさ号滞在のハイライトである警笛体験。
車掌見習は大きな音が苦手だが、今日はさほど驚かずに喜んでいた。

親子ともども、素敵な滞在を楽しませてくれた「夢ハウス・あずさ号」。
鈴木駅長がこの車両を手に入れ、民宿として営業をしていることは、多くのマスコミにも取り上げられ、ここでの詳細は省かせていただくが、その夢を叶えたエピソードには感銘を受けた。

夢は叶う…
Dreams come true…

車掌長は欲張りだから願いは幾つもあるが、もし何か1つだけ叶うとしら、車掌見習が「自分の力」で「自信を持って」生きていけるように育ってほしい。

既にカミングアウトしている通り、車掌見習には発達障害がある。
発語の遅れもあるが、幼稚園に入ってこの1年でだいぶ語彙も増えたし、発語できる言の葉も増えた。

だが、それはまだまだ親が贔屓(ひいき)目に掛け値なしで、言ったことを聴き取る努力をしていることも否めない…

他人が聞けば、まだまだ不明瞭で意思疎通が難しい場面も少なくない。

また、この障害に特有なこだわりや行動パターンもある。
それは、悪いことではないが、やはり事情を知らない他人が見れば、奇異に目に映るだろう…

しかしながら、「奇異」と「特異」は紙一重で、如何様にも見方や評価は変わる。

車掌見習の特異的なことは、記憶力だ。
一度通った道や行った場所は、いつも覚えていたり、どこで何をしたかを彼なりに記憶の引き出しから出し入れできることに、専務車掌と驚かされることも少なくない。

そんな部分的に秀でた「力」は、トコトン伸ばしてあげたい。
そして、その興味を後押しするような「体験」を惜しみなく作ってあげたい…と思う。

車掌見習は「夢ハウス・あずさ号」を後にするとき、「また来るね~」と言った。

その願いは必ず叶えてあげるし、その時にどれだけ成長しているか…
そんなことに目を細めながら、今回の旅を終えた。

末筆ながら、夢ハウス・あずさ号の皆様には大変お世話になりました。
この場を借りてお礼申し上げます。
どうもありがとうございました。
 

コメントお待ちしてます!

コメントはこちらからお願いします

名前

電子メール

コメント