レスカと時給

カテゴリー:④番線:日々雑感方面 2018年8月11日 05:59

 盛夏、こんなとき飲みたくなるのは「レスカ」…

「レスカ」はレモンスカッシュのことであり、車掌長世代は周知だろう。
しかしながら、今でもこの愛しき名称は使えるのか、果たして通じるのだろうか。

車掌長が炭酸飲料を好むのは、アウター5であれば必ずビールだが、日中であれば自販機で買える不二家のレモンスカッシュがお気に入りだ。

不二家のレモンスカッシュが好物なのは、本格的な味わいというか、車掌長が学生時代に喫茶店でアルバイトをして、自ら作っていた味に限りなく近いからだ。

遡ること、30年余り…
車掌長は下宿し某大学の夜間部に通いながら、愛知県某市にあった喫茶店で昼間は働いていた。

今でこそ、愛知・岐阜両県の「モーニング」は全国的に知られているが、当時、車掌長はこのエリアに斯様(かよう)な食文化があるとは、露も知らなかった。

そんな認識のないまま、或る個人経営の繁盛店にバイトとして入った。
店は朝7時から22時まで営業し、車掌長は大学に間に合うよう7~17時の月曜以外週6日働いたが、11時までのモーニングタイムが、とにかく凄まじかった。

平日で200名前後、日曜・休日は400名近くも来店。
最初はホールもやっていたが、カウンター内を任されるようになり、トーストを焼き、コーヒーを入れたり、各種ソフトドリンクやパフェ類も作っていた。

カウンター業務に慣れた頃、マスターがコーヒーを「淹れる」ことを任せてくれるようになり、やり甲斐もあった。

「ネル」と呼ばれる布製のフィルターを使い、大きなポットに抽出してゆくのだが、同じように淹れているつもりでも、温度やお湯を投下するスピードで、味が随分変わることを経験した。
毎朝、マスターに最初の一杯を試飲してもらうのだが、褒められると純粋に嬉しかった。

そして、メニューの中にレモンスカッシュもあった。当時の喫茶店には必須アイテムで、女性客からの注文比率がすこぶる高かった記憶がある。

レモンを半分に割り、搾り器で2個スクイーズ。
背の高い円錐状のオシャレなグラスに搾り汁を入れ、氷・炭酸水を注ぎ、甘くなり過ぎない程度のガムシロップをかける。

比重の重いガムシロップが、氷を伝(つた)いながらゆっくりと沈んでゆくのを待つ間、搾り終えたレモンに螺旋状の切り込みを入れ、グラスに飾る…

そんな作業工程だったことと、当時の提供価格は480円だったことを思い出した。
ちなみに、その値段は車掌長の時給と同額であった。

ゆえに、車掌長にとってレスカは、自身で何杯も作る身近な存在でありながら、他店で自らオーダーするには勇気のいる高価な飲み物という印象があった。

ふと、今朝の新聞に全国の最低賃金が、3年連続で上昇したという記事を目にした。
愛知県は898円だった。

更に、当時の時給はどうだったのか気になり調べてみると、1987年(昭和62)は474円…

最低賃金に近い水準で働いていたことになるが、物事や作業を効率よく回す経験や知恵を習得できたことを考えれば、価値あるアルバイトだったと思った。

レスカ…ほろ苦くも、爽やかな酸味のある、まさに愛しき青春時代を象徴する飲物であったことを懐かしく思い返した。

 

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