次々と廃れる鉄道旅行の魅力

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2019年2月28日 04:58

先週だったろうか…
複数の新聞にJR各社の新幹線や特急の多くが、車内販売を廃止・縮小するとの記事。

その対象列車から車内販売の姿が消えるのは、多くは今春3月16日のダイヤ改正を機にしているが、JR北海道は本日を以って、廃止するとのこと。

最大の理由は「売上の低迷」のようだが、そんなことが理由であれば、JR各社は依然として国鉄感覚が抜け出れていないのだなぁ…と感じてしまう。

「民営化」という言葉を、都合の良い場面では賞賛するものの、ベースとなる考え方は旧態依然とした「発想力」の無さやピンチをチャンスに変える「転換力」の無さが露呈したとも言えよう。

また、「臭いものにはフタをしろ」という、工夫もせずに「儲からないものたち」を手当たり次第に切り捨てるのも常套化し、思考力や組織の力が機能停止しているようだ。

と…、手厳しい物言いを述べ申し訳ないが、誤解を恐れず補足すれば、それも鉄道旅行を愛するがゆえの「エール」なのだと受け止めていただければ有難い。

車内販売の売上が低迷した理由に、乗車前に駅構内や自販機で飲料水や弁当の購入をする人が増えたとあったが、それらの場所で買える「同じもの」を車内でも同様に扱っていたら、そのような状況に陥るのは当然であろう。

いつ自分の席まで来るかわからない車内販売を待つのは、乗車してすぐに飲み食べしたい衝動を抑えるにも、侘しいものがあるのも否めない。

逆に、車内販売でしか手に入れることができない、飲物や弁当、物品があればどうだろうか…と想像すると、車内販売の姿を待ち遠しくなるのではないだろうか。

列車の高速化で乗車時間の短縮も売上が低迷した理由の1つに挙げられていたが、それは飛行機や私鉄有料特急を考えれば、都合の良い理由に過ぎない。

飛行機や私鉄特急は、搭乗・乗車時間が1~2時間ほどであっても、ワゴンをひいたり、機内・車内での物品販売に勤しんでいるし、そうした姿やサービスの提供を受ける時間の有無が、実は日常的でない空間や時間の醍醐味なのだと思う。

列車と飛行機の利用が分かれる移動所要時間の目安に「4時間」というものがある。
鉄道において4時間という時間を無味乾燥なものにするか、或いは、積極的に列車を選択したくなる判断材料に、列車でしか味わえないサービスや魅力があって欲しいと願う。

短絡的な移動時間競争ではなく、その移動時間に求めるのは、創造性のヒントや、殺伐とした日常で疲弊した心の癒しを得られるような体験ができるか否かに、占うのも面白いかもしれない。

きっと、飛行機や高速バスには提供できないような、列車にしかできない、味わえない空間の優位性を活かしたサービスや魅力があるはずだ。

日常の延長のような、自販機やコンビニのような売店で買ったものを車内にも持ち込んで、なんら日常と変わらない思考や行動を繰り広げるしか選択肢がないのであれば、各席にコンセントを付けておけば、利用客は満足するだろう的な発想になるのも致し方ないし、面倒くさくないのかもしれない。

車掌長自身は、車内販売を積極的に利用しているが、2~3年前からは、とくに車掌見習に車内販売の魅力を体験させている。

それは、車内販売員の方々とのコミュニケーション。
ジュースひとつ買うにも、人と言葉を交わし、手を介し、お金を払い物を得るという、一連のやりとりを、「旅育」の一貫として大切にしている。

自販機に無言でICカードをタッチし求めるものを手にする、そんな僅か数秒では味わえない「人」とのコミュニケーションを体験させることの方が、同じ飲料物の対価を払うにも、数倍以上の見えない価値があり、その蓄積は後々、知らず知らずの間に、大人になってからではお金を払っても学べない人間力を得られるように思う。

長い話しになってしまったが、いずれにせよ、車内販売廃止は残念でならないし、また鉄道旅行の魅力が廃れる侘しさ、虚しさを感じてしまった。
 

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