サンライズ瀬戸延長運転

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2015年7月 5日 05:21

今年もサンライズ瀬戸が、琴平までの延長運行を開始した。

JTB時刻表7月号を見ると、延長運行は7/3から9/26までの金・土曜と7・9月の連休部分。

サンライズ瀬戸は、東京から高松まで定期運行するJR唯一の寝台特急列車。
なお、岡山までは寝台券入手が困難な「サンライズ出雲」と併結されている。

サンライズ瀬戸の琴平延長により、両列車は神様に近い駅が終点となった。
出雲大社と金刀比羅宮だ。

それぞれ中国・四国を代表するパワースポットとして有名だが、このたびの延長運行においては、7/3(金)の出発式が行われ両社の宮司や香川県知事もテープカットして、出発を祝ったという。

今日日(きょうび)、夜行列車がどんどん姿を消す中で、このようなニュースがあると心から嬉しく思う。

随分前にも、この乗務日誌に書き残したが、車掌長は夜行高速バスを利用しない。

それは、学生時代の友人を夜行高速バスに殺されたからだ。
もう20年近く前の話で、バスの運転手の居眠り運転による事故だった。

共通の友人からその悲報を知り、後日二人で焼香に行ったが、親御さんの言葉が今も胸に残る。
「なんで新幹線や夜行列車に乗らなかったのか…」と。

おそらく夜行高速バスの方が安かったのだと思う。

高速道路が全国隅々まで延伸され、首都圏や大都市がダイレクトに結ばれるようになった昨今…
今でこそ、規制が強まり一定距離を超える場合の二人乗務や、専用乗降場所の確保を義務付け、廉価(れんか)で運行する悪質な業者を排除することはでき、安全性が増したように思う。

しかしながら、夜行バスの運行本数とJR夜行列車の運行状況は、歪(いびつ)過ぎる。

鉄道からバスへの客離れは、価格の安さや高速道路延伸による路線の充実などが挙げられるが、車掌長は「安全性」と「定時性」「大量輸送」こそ、鉄道利用最大のメリットや環境への優しさであり、個人的にはそれらに加えて「旅情」があると考える。

今回のサンライズ瀬戸のように少しでも、夜行列車に明るい話題や、願わくば、富裕層相手の豪華寝台列車誕生ではなく、誰もがごく普通に駅の窓口で切符が買え、日常的に気軽に乗れる寝台列車の復活を望みたい。


(お知らせ)
昨日、哲×鉄乗務日誌に新たな到着番線が誕生しました。
13番線の「臨時寝台特急北斗星」です。
この番線に到着する列車は、全編成がフィクションになります。

まだ未熟で稚拙な運行になりますが、夜行列車のまどからぼんやりと眺めて過ぎ行く街の灯りのように、気楽に読み流していただければ幸いです。

第一話は、車掌長の学生時代に過ごした土地らしき場所が出てきます。
なお、運行は非常に不定期ですので、あらかじめご了承願います。
 

 

特急が来なくなった駅

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2015年3月14日 05:55

金沢6時00分発、「かがやき500号」が間もなく出発する。

北陸新幹線開業の一番列車だ。
新聞やテレビは、お祝いムードに満ち溢れ、その喜びや賑わいを伝えている。

無論、この日を待ちわびた北陸の方々の「悲願」は達成され、心から祝うべき日と言える。
今日から、首都圏と金沢は最速2時間28分、富山は同2時間8分で結ばれる。

「速い」…

かつて、在来線の特急「白山」が碓氷峠を越え、金沢まで6時間余りを要した時代を知っている者にとっては、驚愕的な速さだ。
また、寝台特急「北陸」や夜行急行「能登」が一夜をかけて走った道のりも、もはやその必要性がない時間的な距離になってしまった。

一方、北陸新幹線開業の陰で、日々の暮らしの利便性を損なわれる駅や地域があるのも忘れてはならない。

例えば、富山と金沢の間にある高岡駅。

新幹線の駅も新設されたが、従来の駅とは離れた場所にある。
そして、従来の駅はJRから第3セクターの鉄道会社に移管され、昨日と今日とでは全く違う駅になってしまった。

最も変わってしまったのが、特急がなくなったこと。
昨日までは、大阪、名古屋、新潟を直通で結ぶ特急や、越後湯沢経由で東京へ連絡する特急が、ひっきりなしにホームに滑り込み、寝台特急「トワイライトエクスプレス」も停車する賑やかで華やかな駅だった。

しかしながら、今日からは特急が1本も通らない駅となってしまった。

特に、今まで乗り換え無しで大阪、名古屋方面へ直通し、それぞれの朝一番の特急に乗れば、両都市に9時前には到着できた。

今後は、新幹線で金沢駅で乗り換えても、その時間には到着できない。
また、日常の通勤通学で利用する人々の運賃も値上がりとなる。

北陸新幹線の開業で、首都圏との結びつきは飛躍的に高まり、強まるだろう。
そして、そこを往来する人々に限っては、利便性が向上し良い話であっただろう。

ただ、それは日常をそこで暮らす人々の利便性も保持されたり、向上することと同時進行でなければ、諸手を挙げて良い話とは言えないと思う…

高岡に限らず、新幹線の速達タイプの列車が通過する駅は、どこも同じような課題や問題を少なからず抱えていることだろう。

願わくば、並行在来線はJRのまま、今までの利便性を確保した上で、北陸新幹線の開業も迎えられたなら、どれほど良かったかと思ってしまう。

そうすれば、トワイライトエクスプレスも、車両老朽化という表向きの廃止理由ではなく、もう少し長く北陸本線を走ることができたかもしれない。

JTB時刻表3月号の北陸地域の頁を眺めながら、一抹の寂しさを感じるダイヤ改正の朝であった。
 

コメント(2件)

ちゃべさんからのコメント(2015年3月14日 07:41投稿)

おはようございます。
ご無沙汰をしています。
昨夜、家族で高岡駅へ特急列車にさよならをしてきました。
帰宅してから、哲さんのHPを開きましたが、コメントかけないまま、寝てしまいました。
起きてから、また書こうと思っていたら、
北陸本線関連の記事。
嬉しいです。
今朝のこちらの朝刊は、お正月かと思うくらいに分厚いです。
今、はくたかの1番列車が金沢に到着したそうです。
東京に、かがやきの1番列車が着くころは、職場に行かなくては。
コメントは、このあたりで途中下車させていただきます。
失礼しました。


車掌長さんからのコメント(2015年3月14日 14:58投稿)

ちゃべ 様

このたびは、「哲×鉄」ブログ本線にご乗車いただきまして、ありがとうございました。
ご出勤前の忙しい時間に初のご乗車、とても嬉しく思います!

そして、そちらの新聞が「お正月かと思うくらいに分厚いです」との表現は、開業の祝賀や慶びがストレートに伝わり、とても素晴らしかったです。

昨日は、ちゃべさんご家族で、特急列車往来の最後を見届けたとのこと、その惜別の想いに共感いたします…
子鉄(!?)のK君もさぞかし、もう特急の来なくなることを不思議に思ったことでしょう。

高岡駅は、旧北陸本線と城端線、氷見線、万葉線が乗り入れる交通の要衝です。
もちろん、今も鉄道会社がJRから移管されてもその線形に変わりはありませんが、各方面からの特急が通らなくなったことは、北陸新幹線開業のデメリットかとお察しします。

車掌長は、高校2年の夏に、初めて高岡駅で降りて城端線や氷見線に乗りました。
当時は両線とも、まだディーゼル機関車が客車を牽く列車が残っており、気の向くまま、砺波や雨晴(あまはらし)で途中下車しました。

特に、氷見線の雨晴海岸は大好きになり、数年後に祖父母や父母と家族旅行で再訪し、構えの立派な民宿にも泊まりましたし、高岡の大仏様にもお会いしました。

また、「高岡」という駅名を初めて知ったのは小学生の頃で、「藤子不二雄」の両氏が漫画家を志し、故郷である高岡から夜行列車で上京するシーンを漫画で見た時でした。

世界的なアニメである「ドラえもん」をこの世に誕生させたお二人の旅立ちが、この高岡駅だったことは、大変感慨深いことです。

末筆ながら、ぜひご家族皆さんで東京へも遊びにいらして下さい!
ちゃべさんご家族の人数でしたら、当車掌区でお泊りいただけます。
その際の宿泊料は、「ホタルいかの素干」でお願いいたしますネ(笑)

これを機会に、ぜひ、またのご乗車をお待ち申し上げます。

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老舗駅弁調整元の廃業に思うこと

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2015年2月26日 05:19

新聞で残念な記事を目にした

JR北海道が来月末をもって、特急列車での車内販売を大幅に廃止するという。
特に、札幌と網走や稚内を結ぶ特急については、全列車から車内販売が消えると知った。

理由はもちろん「採算が取れない」こと。
これで浮く費用は年間2,000万円らしい…

JR北海道は、安全に関わる重大な事故を起こしたり、世間を騒がせた不祥事が相次ぎ、組織体制や財務状況の立て直しに心血を注いでるのは重々承知している。

しかしながら、その事業規模からしてみれば、年間2,000万円の費用削減のために、それ以上の価値がある「旅情」や「文化」をみすみす放棄するのは、長い目で費用対効果を見通した際に、賢明であったかどうかは個人的に疑問が残る。

一方、これはJR北海道のみの問題では終わらない影響もあった。

それは、石北本線の遠軽(えんがる)駅において、名物駅弁「かにめし」を販売する調整元の「岡村弁当屋」が、廃業を決めたこと。

売上の9割超を特急列車への納品が占めていたから…と理由の弁。

1個1,000円の駅弁を、多いときは1日100個ほど納品していたそうで、その納品先であった特急の車内販売が無くなれば、自明であることは否めない…

この売り上げから単純に考えると、多い時で1日10万円ということは、平均して月250万円とすれば、年3,000万円前後となる。
JR北海道の年2,000万円の経費削減の為に、年3,000万円の売上がある老舗零細業者は廃業…

車掌長は経済について全くの素人だが、なんか矛盾していないだろうか?
そして、こうした現象は、おそらく日本各地で起きているのだろう…

「お金」は経済において「血流」と同じ、と聞いたことがある。
そうであるならば、人間の体は血流が止まれば死んでしまうように、経済もお金の流通が断ち切られたなら、その部分(地域)は、壊死(えし)してしまうであろう…

毛細血管は全身の隅々まで酸素や養分を届ける、人間の生命維持に不可欠な組織であるように、地方経済の末端を担う中小零細業者も、日本経済を支える重要なその構成者であるはずだ。

この調整元は昭和初期から、遠軽の街の発展と衰退を目にしてきた。
このたび、自らもその灯を消すことになったが、自身の理由でないことが誠に残念だ。

車掌長は、初めて北海道を訪れた高校2年の春休みに、この「かにめし」を食べた。
上野発の夜行列車と青函連絡船を乗り継いで北海道へ渡り、更に函館での夜景観賞後に再び夜行列車に乗車し、札幌で特急列車に乗り換えはるばる網走へ向かう途中で出逢った味であった。

最後にもう一度、ぜひあの味を…と思うが、さすがに道東は遠い。

もし、これをお読みの方で近々道東方面へ行かれるなら、ぜひこの駅弁を味わっていただきたい。
そして、確実に手に入れたいなら、予約をしておくことが必須。

日頃、どこで食べてもほぼ変わらないコンビニやファーストフード、チェーン店の味に馴らされた舌が、その駅弁の滋味溢れる味わいと食感にどう反応するか…

それは、自身で体感する以外に術(すべ)はない。

また、昔から変わらぬ包み紙も魅力的であった。
時代に迎合しない素朴さとわかりやすさに、個性的なインパクトがあった。

末筆ながら、調整元の岡村弁当屋さんにおかれましては、長い間の営業お疲れ様でした。
そして、北海道ならではの味覚を「駅弁」という形で楽しませていただき、誠にありがとうございました。

 

いい日旅立ち・Twilight Express(余章)

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2014年12月28日 20:14

トワイライトEXPの旅を終え、すっかり日常の生活に戻った或る日、1つの小包が届いた。

伝票を見ると、心当たりのある品名を目にし、再度トワイライトEXPへの興奮が呼び覚まされた。
それは、車内販売で奮発して買った1対のコーヒーカップであった。

食堂車「ダイナープレヤデス」のモーニングで使用されるそのカップ…
休日の好天の昼下がり、コーヒーを注ぎ、口に含むと、何とも言えぬ余韻に浸ることができた。

初回の序章から”いい日旅立ち・Twilight Express”と題し、長々と綴ってきたが、車掌長がこの場で記し続けてきた”いい日旅立ち”とは、「別れ」を意味していた…

それは、単に来春廃止されるトワイライトエクスプレスとの別れだけではない。
上手く表現できないが、何か車掌長の内面的な部分との別れを意識していたように思う…

小学生の頃から一人旅を始め、百回以上は乗った夜行列車や寝台列車。
それらが、ここ十年ほど前から毎年春になると数本ずつ、その使命を絶たれ姿を消されてきた。

そして今年、もう消される列車そのものがなくなり、比較的乗車率が高く廃止は暫く無いだろう…と、高を括っていた「トワイライトエクスプレス」と「北斗星」の廃止が発表された。

一個人がセンチメンタルに存続を訴えても、覆すことのできない無力さに、虚しさが胸中を漂う…

しかしながら、そんな考え方を変える意志を決意したのが、このトワイライトEXPの旅であった。

それは、沢山のことを吸収できた、夜行列車や寝台列車で過ごした「時間」への感謝。
そして、それらの蓄積を経て、研ぎ澄ませることができた「時間」に対する独自の概念…

今後は、時刻表や過去の列車と共に歩み積み上げた「時間」について、見つめてゆこうと考えた。

「時間」とは、誠に不思議そのもの…
誰にも等しく与えられた1日24時間という平等な枠組みの中、その営み次第で様々なドラマが生まれる。

現実的には、運の有無や貧富の差、性別、生育した国や地域の環境、社会状況etc…本人の努力だけでは咲かない花も、実らない果実もあるかもしれない。

だが、仮にそうであったとしても、何か1つでも己の夢や欲するものを追い続けることが、結果はどうあれ唯一無二の自分の人生を楽しむ方策なのではないだろうか…

そんなことに、この歳で気付き、この機を”いい日旅立ち"と位置づけたのが題名の由縁。

ところで、今回の乗務日誌は、実際にトワイライトEXPに乗るまでの章の方が、圧倒的に長い構成となっている。

これは、さほど意識した訳ではなかったが、結果的にこのような構成になってしまった。
そこで、こんなふうに感じることがあった。

それは、物事は本番や当日までの準備期間、そこまでの期待や夢を見ている時間こそが、実は最も楽しいのではないか…ということだ。

旅も人生も、準備や心持ち次第で、如何様にも豊かに楽しく過ごせると、言い換えられるだろう。

"いい日旅立ち"、そんな想いを新たにした今…
トワイライトエクスプレスの汽笛が、遥か遠くで聴こえたように思う。

(追記)
末筆ながら、稚拙な内容に最後までお付き合いくださり、誠にありがとうございました。
今回分をもって、本年の乗務納めといたします。

2014年も「哲×鉄」乗務日誌、ご愛読(ご乗車)いただきお礼申し上げます。

皆様、どうぞ良いお年をお迎えください!
 

 

コメント(2件)

希望者挙手さんからのコメント(2014年12月29日 14:19投稿)

こんにちは
今年も一年、ありがとうございました。

今年最後の大安の日に、トワイライトエクスプレスの素敵な旅物語で締め括られるのは、さすが車掌長ですね。

今年は列車での旅がほとんどなかった私ですが、新年は汽車の旅での幕開けを企画しております。

以前より家内にSLに乗ってみたいと言われており、結婚20年を迎えた今年は、元日から夫婦でSLパレオエクスプレスに乗って、新たな気持ちでいい日旅立ちを迎えられればと考えています。

車掌長の念入りな作戦とは違い、数日前に思い立ったものですから、三峰口から復路のみの乗車となりますが、往路はのんびりと長瀞でこたつ舟など楽しみながら、秩父鉄道の旅を楽しみたいと考えております。
並走する国道140号線は何度もバイクで走ったことがあるのですが、秩父鉄道に乗るのは、実は初めてです。

今年も色々とありましたが(笑)、車掌長からは色々と助言や刺激をいただき、ありがとうございました。

お互い良き年となるよう、今まで以上にぶっかましていきましょう!(笑
新年もどうぞよろしくお願いいたします。


車掌長さんからのコメント(2014年12月29日 19:34投稿)

希望者挙手 様

本年も毎度毎度のご乗車、誠にありがとうございました!

今年最後の大安の日に乗務納めとしたこと、バレバレでしたか?!
行動パターンがお見透かしで、お恥ずかしい限りです(笑)

ところで!ご結婚20周年の幕開けを「鉄」で飾るとは、縁起の良いことですネ!
Anniversary な1年を、どうぞ佳き年にして下さい。

もし、池袋からレッドアローで秩父へ向かい、前述のような行程でしたら、西武鉄道の「秩父フリー切符」がお得ですのでご参考まで。(こたつ舟もささやかな割引があります)

SLは車掌長も大好きな乗り物です!
生き物のような息遣いや迫力は、何か元気をもらう気分です。

末筆ながら、こちらこそ色々なことをこの乗務日誌上で教えていただき、大変勉強になりました。この場をお借りしてお礼いたします。ありがとうございました。

そして、希望者挙手さんの仰る通り、来年も今まで以上に盛り立てましょう!
まずは、船橋ですかね?!

お互いにかなりズッコケも多い人生ですが、人生は泣いても笑っても一度きりですから、大いに楽しみましょう!

では、来年もぜひ沢山のご乗車、お待ちしております!

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いい日旅立ち・Twilight Express(最終章)

カテゴリー:①番線:鉄道(JR・私鉄)方面 2014年12月28日 04:50

食堂車が連結されているのも、トワイライトEXPの魅力の1つ。

ダイナープレヤデス(食堂車)は3号車にあり、南千歳を出発する頃から営業を始める。
そして、16:00までの時間帯がティータイムとなる。

車掌見習を連れてのフランス料理のディナーは、想像しただけでもゾッとしてしまう…
ゆっくり味わえないどころか、周りのお客さんへの気遣いや、実際に間違いなくご迷惑をかけることを想像すると尻込みしてしまったので、このティータイムは貴重な利用時間だ。

いまや日中に食堂車を利用できるのは、日本で唯一、このトワイライトEXPのみ…
まずは専務車掌とサッポロ・クラシックを注文し、乾杯!

やがて、日本の鉄道で最も長い直線区間(沼ノ端~白老)へと列車は入り始めた。
厳密には途中駅での分岐部分に曲線もあるが、28.7㎞の直線区間は、さすが広大な北海道と実感。

空席を待つ他のお客さんもいなかったので、つい1時間弱も長居してしまったが、数量限定のスィーツもいただき、至福な時間を過ごすことができた。

札幌を出発して2時間が経とうとする頃、やっと今宵の居室へと戻った。
車窓は夜への準備を始めたようで、早くも薄暗くなっていた。

今回はB寝台コンパートメントと呼ばれる、上下2段の寝台が向き合った4名用の区画。
この4名分の切符が取れると、廊下との仕切りにガラス戸やカーテンもあり、個室化できる。

トワイライトEXPであれば、最後尾展望が楽しめる「スィート」や、優雅な個室「ロイヤル」での"一夜の主(あるじ)"になりたいところだが、その切符は99.9%入手不可能…

また、子連れで荷物も多いと、B寝台個室(2名用)での添い寝はかなり窮屈なので、今回の旅の趣旨としては、ベストなチョイスだったと思う。

更に、このような国鉄時代の面影を色濃く残す寝台設備に、専務車掌や車掌見習にも乗せてあげられたことが嬉しくもあり、なんだか誇らしかった。

まもなく、本日最後の停車駅「洞爺」に到着。
ここで後続の特急列車に道を譲るため、暫し停車。のんびり記念撮影をしたりホームを散歩した。

洞爺駅を出ると、注文しておいた夕食の「日本海会席御膳」が部屋に運ばれた。
大きな箱御膳は一善ずつ丁寧に包まれ、温かいお吸い物も付いていた。

ここで、自宅から持参したCAVAを開栓し、祝杯!
乾いた喉に心地よく、スペイン産のスパークリングワインが通過していった。

御膳の料理は、どれもお酒の杯が進む肴ばかりで、酔いの走りも速い。
そんな頃合いに、記念グッズを満載した車内販売のワゴンが部屋の前で止まった。

こんな気が大きくなっている時に、限定グッズ販売が訪れるとは見事な算段だ…と思いながらも、車掌長にとっては高額な品にもついつい手を出してしまった。

車掌見習はパジャマに着替えて、下段の1つを占有して眠っている…
大きくなった頃の記憶に残るはずもないが、せめて、このような寝台列車に乗ったという想い出を残してあげたく、パチリパチリと様々なアングルのベッドで眠る車掌見習を撮り、眼を細めた。

車掌長は独り、廊下に格納された椅子を引き出し、暗闇の車窓を眺めた。
子ども時代から馴染みのこの椅子の座り心地…

とっても懐かしいが、これで座り納めだなぁ…と、座面の生地を撫でながら感謝し、これまでの功績を礼賛(らいさん)した。

翌朝6時、予約しておいたシャワーを浴びに4号車へ。
ちょうど、ツアー参加者の朝食時間も同刻だったようで、同じバッジを付けた人々が狭い車内を3号車へ向かって大移動していた。

一般客の朝食は3部制で初回は6:45~だから、ツアー客は番外であることを知った。
哲×鉄車掌区一行の朝食時間は8:20開始だったが、食堂車に入ると「○○クン、おはよう!」と、車掌見習の名前を言って出迎えてくれた。
これはとても嬉しい一言であった。

金沢駅を出ると、車内で朝刊が購入できる。
早速、部屋でコーヒーを飲みながら紙面に目を通した。列車内でありながら、ホテル滞在のような快適さだ。

敦賀駅では、機関車付替えのため、最後の長時間停車。
ここでは食堂車のスタッフが、記念撮影の手伝いをしてくれ、1号車スィートの車体に施されたトワイライトEXPのエンブレムの前は順番待ちの盛況ぶりであった。

哲×鉄車掌区一行も、トワイライトEXPの車掌と一緒に記念撮影をしていただいた。

敦賀駅を出発する際、部屋へは戻らず4号車のサロンへ向かった。
ここはぜひ見ておきたい「鳩原ループ線」の眺望を、大きな車窓から楽しみたかった。

勾配をかせぐために大きな弧を描いてトンネルを抜けると、ほぼ一周した形になり、その下方にはついさきほど走った線路が見えるポイントであった。

やがて列車は、琵琶湖の西岸を走りはじめ、いよいよ旅の終わりが近づいてきた…

最後の停車駅である新大阪駅を出ると、昨日札幌で聴いた"いい日旅立ち"のメロディが流れた。

12月12日、12時53分、定刻に大阪駅着。

走行距離1,508.5㎞、所要22時間48分。
名実ともに憧れの日本最長距離列車「トワイライトエクスプレス」の旅は終わった…
 
もう逢うことのできない緑色の車体に、感謝と惜別の念を込め、列車を見送った。
 

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