「とちおとめ」と時刻表

カテゴリー:③番線:時間旅行、時刻表方面 2018年12月13日 04:47

真っ白なショートケーキに、真っ赤なイチゴ…

車掌見習は、自分の誕生日やクリスマスが近づくと、このケーキを楽しみにする。
そして、イチゴだけを食べ満足そうな表情で「あ~美味しかった!」と。

車掌長が子どもの頃の季節感としては、イチゴは5月というイメージだった。

それは、親戚が栽培し、出荷に至らなかったイチゴ、或いはお裾分けように残しておいてくれたものをGW頃にいただきに、壊す前の畝(うね)に実った赤い実を採るのが楽しみであった。

昨日、そんなイチゴの想い出を懐かしみながら、或る御方から届いた「とちおとめ」を、大変美味しくいただいた。

或る御方とは、「哲×鉄」にお問い合わせをくださった、鉄道好きなお子さんの母上からであった。
そして、そのお子さんの願いを叶えるべく、お手伝いしたお礼のイチゴであった。

時刻表がきっかけで、思いがけないご縁とお手伝いを申し出てからのドラマの展開に、清々しい思い出ができ、その母上には感謝したい。

何事も、短絡的なやりとりで物事が進む傾向が強まる今日日(きょうび)、媒体こそメールではありながら、往復書簡のように進捗をやりとりし、一喜一憂しながら、目的を達成できたことは、この上ない喜びであった。

時刻表は、言うまでもなく、鉄道の時刻を調べる道具に過ぎず、それもネット検索で十分とされる向きも多いなか、別の意味や存在意義を感じる今日この頃…

それは、時刻表はウイスキーのように、一定の時間を経てこそ、味わい深い物語を育むのだと…

そう…その人、その人の特別な「時間旅行」へ誘ってくれる、タイムカプセルのような役割もあるのだと思える。

「とちおとめ」と時刻表も、不思議なご縁であったが、上述の母上のお子さんを想う愛情に、より一層のsweetな食感を覚えることができた。

またいつの日か、イチゴを口にしたときに、きっとその甘美を思い起こすだろう…
 

 

コメント(3件)

Dreamさんからのコメント(2018年12月13日 09:02投稿)

車掌長 様

初乗車失礼致します。

この度は息子のためにご協力いただきましてありがとうございました。

車掌見習くんにも喜んでいただけた様で何よりです。

まだ車掌長様が入手してくださった時刻表は息子の手には渡っていませんが、きっと喜んでくれるはずです。
また、私も同様に今回一連の流れは素晴らしい思い出となり、生涯このご恩を忘れることはないでしょう。

まさか「哲×鉄」に自分たちの事が記載されるなど思っておらず、恐縮ながらも嬉しく思います。

改めて、この度は誠にありがとうございました。

年明けにまたお贈りいたしますので、しばしお待ちくださいませ。


追伸、先日息子と話しておりましたところ、
「僕は、撮り鉄と乗り鉄かなー。音鉄ではないよ。なかにはねぇ、時刻表鉄って人もいるんだよ!」
と不意に言い出し…車掌長様のことだ、と心の中で思い、
「へぇ、いろんな鉄があるんだねぇ」と流しましたがやり取りを知られているかの様でドキッとしました。


車掌長さんからのコメント(2018年12月14日 04:50投稿)

Dream様

このたびは「哲×鉄」にご乗車いただき、誠にありがとうございました。

今般のお手伝い、ちょうどひと月ほど前、「哲×鉄」にお問い合わせくださったことがきっかけでした。

当初、楽観的にお引き受けしたものの、現実はシビアでした…

また、一時は代用品もご提案したほどでしたが、その後も、やはりストライクに「実物」であることを追い求め、ご依頼の物を見つけたときは、この上ない喜びでもありました。

Dreamさんが往復書簡で仰った、ご子息の名前に込めた願いでもある「夢を叶える」は、車掌長もそれを自身のことのように体感することができたのです。

Dreamさんのお名前も素敵ですネ。
「DREAMS COME TRUE」を連想します。

余談ですが、車掌長が大学進学時、東京駅から夜行鈍行列車に乗って新天地へ旅立つ際、親しい友人らがホームまで見送りに来てくれました。

そのとき、最も仲の良かった友人がくれた封筒を車内で開けると、便箋5枚とカセットテープが一巻入っておりました。

そのカセットには、彼が選曲してくれた、車掌長を応援する曲が意図する順番に録音されており、便箋にはその曲を選んだ理由が、彼らしい言葉で熱く書かれておりました。

その中のひとつに、こんな言葉がありました。
「人生でもっとも大切なもの、夢」
「そして、それを実現させる意思と方法」と…

この言葉は今でも、車掌長の心の中で大切にしているものです。

このたびのDreamさんとのご縁も、きっと、Dreamさんがご子息を思う愛情や慈しみが、車掌長にも響くものがあったのだと思います。

こちらこそ、このひと月ほどの間、ドラマチックな時間を過ごさせていただき、ありがとうございました。

これをご縁に、ご子息と車掌見習の成長の見守りを、ともに交流できれば嬉しく存じます。

P.S
最近、車掌長は「時刻表鉄」も然(さ)る事ながら、「呑み鉄」も愛好してますが、これはご子息にはまだ早いですネ(笑)

Dreamさんからのコメント(2018年12月14日 09:03投稿)

車掌長様

再度乗車させていただきます。

明日でちょうどひと月ですね。
シビアな現状の中、見つけ出していただけたことは一縷に車掌長様のご尽力の賜物です。

「夢」「Dream」どちらも同じ意味ですが、好きな言葉なのです。

車掌長様のご友人も粋な計らいをする方ですね。
ご友人のお言葉にも、非常に共感できます。


こちらこそ、これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。お互いの子供たちの成長を見守りましょう。

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時刻表記念日Ⅱ

カテゴリー:③番線:時間旅行、時刻表方面 2018年10月 5日 05:04

 今日は「時刻表記念日」。

同じタイトルで、6年前の今日、乗務日誌に綴っていたことを思い出し読み返してみた。
あれから6年…

2012年は、寝台特急「日本海」の定期運転が廃止になったが、まだ「北斗星」や「トワイライト・エクスプレス」、「カシオペア」、「あけぼの」、「はまなす」は健在だった頃…

いまや、「カシオペア」がツアー専用列車として、高額な料金設定ながら走っているのは幸いだが、みどりの窓口で買えた「寝台券」を手に、乗車日を心待ちにしていた寝台列車には、もはやどんなにお金を積んでも乗ることはできない…

今日の空前の鉄道ブームも喜ばしいことだが、いまの子ども達にも、寝台列車の旅を体験させてあげることができたなら、更にその歓びの裾野も広がっていたことであろう。

ところで、6年前と言えば、車掌見習が生まれた年。
車掌見習も幼稚園年長となり、来春は小学生…
歳月の歩みは、ふと気づくと速い。

そういえば、まだ物心つく前に、車掌見習に寝台列車の旅を体験させようと、「トワイライト・エクスプレス」や「カシオペア」に乗ったことを思い出した。

いまでは、全国に数か所あるブルートレインに泊まれる施設を巡っている。

秋田県小坂町の「あけぼの」や、熊本県多良木町の「はやぶさ」も訪れた。
あとは、岩手県岩泉町の「日本海」にも、いつ行こうか計画中である。

車掌見習も、自身で時刻表を見ながら、単純な行程はプランできるようになった。
日曜の朝など、車掌見習が時刻表を見ながら、乗る列車や駅名、時刻を隣りに座って聞き取り、車掌長が紙に書いくようなことを楽しんでいる。

近いうち、車掌見習が立てたプランで列車に揺られ、ともに旅することがささやかな夢…

そんな想いを描き抱いた、2018年の「時刻表記念日」であった。


 

今月のJTB時刻表

カテゴリー:③番線:時間旅行、時刻表方面 2018年9月20日 05:38

 今月のJTB時刻表(2018.10月号)は、大変面白かった。

表紙に大きく「よん・さん・とお」大研究と書かれ、興味をそそられた。
数字を3つ並べたようなこの独特な言い方は、今からちょうど50年前、国鉄が昭和43年10月1日に行なった白紙ダイヤ改正にちなんだ名称だ。

JTB時刻表は、創刊93年。
今号のように、50年前に発行された時刻表を現在と比較し、わかりやすく解説してくれるのは、JTB時刻表にしかできない芸当だ。

巻頭グラビアを読み進めると、50年前の伝説の大改正のあらましが、興味深く蘇る。

車掌長も大好きな表紙である1968年10月号は、東北本線全線電化複線化を機に同時デビューした583系が、その構図も恰好よく表紙を飾っているが、今号もそれを彷彿させる583系を登場させているところは、心憎い演出だ。

先日の乗務日誌で、最近の時刻表はダイヤに面白みがないと綴ったが、それと反比例するように、最近のJTB時刻表の巻頭特集は、面白味を増し続けている。

時刻表編集者皆さんの時刻表を愛する気持ちが、伝わってくる。

時刻表はそもそも、最新のダイヤを調べるための媒体・手段であり、本来の使命。
そして、実用性や一覧性、視認性の高さが追及され、幾度となく改良も重ねられてきた。

それらの点において、時刻表は「芸術品」の域に達していると、車掌長は認識している。
そして、このような芸術品が、毎月安価に発行され続ける文化も、世界に誇れることだ。

車掌長は最近の「日本スゴイ」的な、何でも日本を持ち上げるのは、肌感覚としてちょっと過剰だなぁ…、違和感があるなぁ…、ホントのところどうなのかなぁ…と、少々胡散臭さを感じていた。

そして、それらのスゴイと発信される話題は、それらサービスやモノを提供する人々本人にとって、ハッピーなことなのか…と心配してしまう。

そうした話題が利用され過ぎて、実は働き手としては過度な負担を強いられたり、ストレスだったり、自身が充分に休めなかったり…

日本自慢について、少し悲観的なことを言い過ぎたかもしれないが、殊、この時刻表については、世界に誇れる一品であると思っている。

きっと、想像にも及ばない大変さもあると察するが、このような素晴らしい書籍を、ごく少数の方々の尽力によって編集・発行されていることに敬意を抱くとともに、感謝している。



 

グリーン車マーク

カテゴリー:③番線:時間旅行、時刻表方面 2018年7月19日 04:36

最近、汐留で仕事をしている。

昼休み、同僚が昼食をとる合い間、思い立って「旧新橋停車場 鉄道歴史展示室」へ向かった。
この施設は、鉄道発祥地である史跡を商業施設及びミュージアムにしたスペースだが、毎朝通る道すがら、企画展「没後20年工業デザイナー 黒岩保美」の文字が目に留まり気になっていた。

誠に失礼ながら、黒岩保美氏の功績は知らなかったが、国鉄時代の特急のヘッドマークやテールマーク、車体塗色等を手がけた御方だと知った。

なかでも、グリーン車マークを考案したことも知り、敬愛の念を抱いた。

グリーン車自体は、1969年に等級制から移行された新たな上級車両設備の名称だが、四つ葉のクローバーをイメージした緑色のマークは、車掌長が子どもの頃の憧れの車両(空間)であった。

子ども心ながらに、高嶺の花、近寄りがたいオーラを感じさせる車両であり、その入口にあるグリーン車マークは、そんなシンボルでもあった。

実際、グリーン車のデッキ付近には、車掌室が配置されることが多く、無用な者の立ち入りを監視されているような関所のような感があった。

また、キャビンに入るドアも、普通車が「引き戸」であったのに対し、グリーン車の多くは「開き戸」であったことも、何か特別な空間であった。

開き戸は引き戸に比べ気密性が良いためと思われるが、曇り硝子で見えない向こう側の異空間は、子どもの好奇心の的であった。

この車両に乗れる人は、高額な別途料金を払える人物であることは容易に想像できた。
また、実際に乗っている人を見れば、身なりも違うし所持品にも気品があるように、当時は思えた。

そんな子ども時代の羨望の眼で見入ったグリーン車マークを考案した御方が、黒岩保美氏であったことを知った。

あれから40数年が経ち、グリーン車もかなり身近な存在となり、TPOや気分に合わせてカジュアルに利用できる車両設備となった。

ふと、仕事の昼休みに立ち寄った企画展だったが、童心に帰る時間旅行ができたように思う。
 

編集長だより

カテゴリー:③番線:時間旅行、時刻表方面 2018年5月27日 19:49

毎月末、楽しみにしている時刻表の発売日。

今月もワクワクしながらページをめくり、黄色のページになったとき、或る異変を感じた。
それは「編集長だより」なるコーナーの新設。

長い間、日本交通公社時代からJTB時刻表を愛読してきたが、編集長のコメントが巻頭部分に顕れたのは今号が初めてではないだろうか…と思う。

時刻表編集者サイドと利用者及び読者サイドとの誌面交流を図った、エポックメイキング的な時刻表は、1963年8月号からだと認識している。

当時の編集室担当者佐藤氏が、交流欄「ビュッフェ」を立ち上げた趣旨を当該時刻表で述べられているが、以来、そのコーナーの名称は変わりながらもそのスタンスは継続され続けてきた。

そして、今回2018年6月号において、編集長ご自身が読者向けに巻頭部で、今号の読みどころをコメントされているのは、大変素晴らしいことだと思った。

今や時刻表も、会社の総務・経理といった部署で、業務目的で利用される場面は、ことごとく減ったと容易に想像できるが、依然として趣味目的で時刻表を購入している読者は、一定数いることであろう。

そんな読者層に目を向けた編集長の眼力は、時刻表愛読者として双方向の「絆」のような…そんな温かみを感じるものがあった…

また、ここ数年のJTB時刻表の進化ぶり、特に索引地図の一新は、目を見張るものもあった。
歴史に胡坐をかかない、そんな編集姿勢も好感を抱いていた。

昔から読み・書き・算盤と言われるが、そんな学習の「基本」全てが、時刻表の活用次第で十分に教育的な一面を持ち合わせていることも、車掌長は自身の経験から推奨できると思っている。

大袈裟な物言いになってしまうが、時刻表が単に趣味の世界を満たす嗜好品から、人を育てる「教材」としても、世の中に受け入れられたり、認知されることを切に願ってやまない。

幾つもの旅程を考え、旅というリアルな体験を通して満足感や失敗、トラブル解決等、そこで得た教訓を次の旅に活かすという営みは、日常の生活や仕事の組み立て、ひいては人生の歩み方にもそのまま投影される。

自身の意志決定を補助したり、根拠となった時刻表が、今後も末永く、多くの方に愛され続ける書物であってほしいと心から願う。




 

 

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